60 / 158
勇者か、魔族か
しおりを挟む
ユーリの国つぶす発言から、真っ先に言葉を発したのは、ジリムさんだった。
やっぱり、勇者だわ。
まるで、この一連のくだりがなかったのように、
「では、アデル王女の滞在期間は、最初のご本人の申し出を尊重し、1週間ということに決定します」
と、言いきった。
「えー! 短いよ!」
と、せっかくの発言を無駄にしようとする、デュラン王子。
「あなたは黙っててください。…っていうか、デュー、だまれ!」
ジリムさんは、デュラン王子に小声で一喝した。
魔王にこの口調、やはり、ただものではないジリムさん。
そして、デュラン王子、本当にデューって呼ばれてるんだね。
ジリムさんは、
「すみません。ちょっと目に疲れが…」
と断って、眼鏡をはずし、目頭を押さえている。
ほんとに、お疲れ様でございます。
睡眠不足の上、打ち合わせとは思えない、おかしな状況に放り込まれて、申し訳ないです…。
そして、眼鏡をかけなおすと、私にむかって、
「あいまいな滞在期間だと、警護に問題もでますし、1週間の間に、リッカ先生との面談もなんとかできるように、調整してみます」
と言ってくれた。
もう、あなたは神ですか?! 後光が見えます!
私は、ばきっと立ちあがり、
「ジリムさんには、お忙しいところ、大変ご迷惑をおかけします。が、リッカ先生とのことだけは、なんとか、なんとか、なんとか、よろしくお願いいたします!」
そう言って、がばっと頭をさげた。
一瞬、シーンとした後、
「なんか、令嬢的な要素がまるでない、斬新な言葉とお辞儀だったね…」
と、ルイ兄様が、ぽつりと言った。
そりゃあ、リッカ先生だよ! なりふりかまってられないわ。誠意をみせなきゃ!
ジリムさんは、少しポカンとした後、くすっと笑った。
お、はじめての笑顔!
デュラン王子も笑いながら、ジリムさんに言った。
「ほら、王女らしからぬ、おもしろさでしょ?」
んん? それって、ほめられてないよね。
「なるほど…、デューが気に入るのもわかりますね。おもしろい…」
と、つぶやいた。
眼鏡をくいっとあげて、こちらを見ている。
眼鏡越しでも、美形は目力が強いね。
そして、私に向かって、
「リッカ先生の面談の機会は、必ず手に入れてみせます。私は、狙ったものは、どんな手を使ってでも、必ず手に入れる主義ですので。お任せください、アデル王女様」
そう言って、爽やかに微笑んだ。
おお、なんと、頼りになるお言葉!
でも、なんか、ちょっと、変な文だったよね?
怖いというか、見に覚えのある系統というか…。
ええと、もしや、あなたは、勇者ではなく、魔族系ですか?
そして、国をつぶす発言をして以来、沈黙している、お隣の魔王。
さっきから、更に、何か不穏な気配がながれだしてます。
何か、お気にさわりましたか? 怖くて見れないけど…。
一応、確認しといたほうがいいかしら?
と、思った時、騎士団長のラルフさんが、
「では、行き帰りや、滞在時の警護については、私とオルブライトさんで話し合っておきます。決定した内容を、後程、みなさんにおまわしすることにいたします。では、訓練がありますので、お先に失礼いたします」
そう言って、颯爽と去っていった。
確かに、このまま、ここで話していても、何も決まらなさそうだものね。
打ち合わせというより、なんか、魔族のつどいみたいになってるし。
お忙しいところ、来ていただいたのに、本当にすみません…。
やっぱり、勇者だわ。
まるで、この一連のくだりがなかったのように、
「では、アデル王女の滞在期間は、最初のご本人の申し出を尊重し、1週間ということに決定します」
と、言いきった。
「えー! 短いよ!」
と、せっかくの発言を無駄にしようとする、デュラン王子。
「あなたは黙っててください。…っていうか、デュー、だまれ!」
ジリムさんは、デュラン王子に小声で一喝した。
魔王にこの口調、やはり、ただものではないジリムさん。
そして、デュラン王子、本当にデューって呼ばれてるんだね。
ジリムさんは、
「すみません。ちょっと目に疲れが…」
と断って、眼鏡をはずし、目頭を押さえている。
ほんとに、お疲れ様でございます。
睡眠不足の上、打ち合わせとは思えない、おかしな状況に放り込まれて、申し訳ないです…。
そして、眼鏡をかけなおすと、私にむかって、
「あいまいな滞在期間だと、警護に問題もでますし、1週間の間に、リッカ先生との面談もなんとかできるように、調整してみます」
と言ってくれた。
もう、あなたは神ですか?! 後光が見えます!
私は、ばきっと立ちあがり、
「ジリムさんには、お忙しいところ、大変ご迷惑をおかけします。が、リッカ先生とのことだけは、なんとか、なんとか、なんとか、よろしくお願いいたします!」
そう言って、がばっと頭をさげた。
一瞬、シーンとした後、
「なんか、令嬢的な要素がまるでない、斬新な言葉とお辞儀だったね…」
と、ルイ兄様が、ぽつりと言った。
そりゃあ、リッカ先生だよ! なりふりかまってられないわ。誠意をみせなきゃ!
ジリムさんは、少しポカンとした後、くすっと笑った。
お、はじめての笑顔!
デュラン王子も笑いながら、ジリムさんに言った。
「ほら、王女らしからぬ、おもしろさでしょ?」
んん? それって、ほめられてないよね。
「なるほど…、デューが気に入るのもわかりますね。おもしろい…」
と、つぶやいた。
眼鏡をくいっとあげて、こちらを見ている。
眼鏡越しでも、美形は目力が強いね。
そして、私に向かって、
「リッカ先生の面談の機会は、必ず手に入れてみせます。私は、狙ったものは、どんな手を使ってでも、必ず手に入れる主義ですので。お任せください、アデル王女様」
そう言って、爽やかに微笑んだ。
おお、なんと、頼りになるお言葉!
でも、なんか、ちょっと、変な文だったよね?
怖いというか、見に覚えのある系統というか…。
ええと、もしや、あなたは、勇者ではなく、魔族系ですか?
そして、国をつぶす発言をして以来、沈黙している、お隣の魔王。
さっきから、更に、何か不穏な気配がながれだしてます。
何か、お気にさわりましたか? 怖くて見れないけど…。
一応、確認しといたほうがいいかしら?
と、思った時、騎士団長のラルフさんが、
「では、行き帰りや、滞在時の警護については、私とオルブライトさんで話し合っておきます。決定した内容を、後程、みなさんにおまわしすることにいたします。では、訓練がありますので、お先に失礼いたします」
そう言って、颯爽と去っていった。
確かに、このまま、ここで話していても、何も決まらなさそうだものね。
打ち合わせというより、なんか、魔族のつどいみたいになってるし。
お忙しいところ、来ていただいたのに、本当にすみません…。
36
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
【本編完結】副団長様に愛されすぎてヤンデレられるモブは私です。
白霧雪。
恋愛
王国騎士団副団長直属秘書官――それが、サーシャの肩書きだった。上官で、幼馴染のラインハルトに淡い恋をするサーシャ。だが、ラインハルトに聖女からの釣書が届き、恋を諦めるために辞表を提出する。――が、辞表は目の前で破かれ、ラインハルトの凶悪なまでの愛を知る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる