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あの男は、今どこに
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ユーリは、会員制サロンで、ゆったりとお茶を飲んでいた。
プライベートが確保されているため、どこでも目をひいてしまユーリにとっては、安心してくつろげる、数少ない行きつけの場所だ。
そんなユーリとは正反対の、印象に残らない顔をした男がそばに立ち、ユーリに話しかけている。
「…ということで、今、アデル王女は、孤児院で料理を手伝っています」
「へえ、変わった観光だね。でも、アデルって、料理できるの?」
ユーリは小首をかしげた。
「卵をわる練習をしていました」
ユーリの彫刻のような美貌に、一瞬だけ、笑みがひろがる。
「その段階? あいかわらず、かわいい。…でも、あの王子がそれを見てるのが、腹立たしいんだけど」
冷気が噴き出し、男は思わず身震いする。
「まあ、いいや。じゃあ、引き続き、アデルの身の安全と、事細かい報告を」
「了解」
そう言って、男は立ち去ろうとしたが、振り返って、にやりと笑った。
「主がいなくても、王女は楽しそうだよ。王子のこと、先生って呼んで、えらく尊敬してたしね。株があがってるよ。うかうかしてられないんじゃない?」
すっかり、口調が変わっている。
「死にたいの? 早く行け」
ユーリから殺気が放たれた。
「こわっ」
そう言うと、男は素早く立ち去った。
その後ろ姿を見て、少年の頃を思い出した。
暗殺に来たのが、今の男だった。
自分と同じ年齢で、すでに暗殺者だと知り、興味をひかれ、破格の待遇でひきぬいた。
まあ、暗殺者はいらないから、自分専用の影としてだけど。
もう長いつきあいになるから、俺のことを熟知している。
が、好みも似ているのか、あいつ、アデルを気に入ってるんだよね。
俺から離れようとすると、やたらと喜ぶ。意味不明だ。
ほんと、アデルは変なやつには特に気に入られるよね。
昔から、どこかへ顔をだしたら、だれでもかれでも、たらしこんで帰ってくるし、面倒なんだよね。
結婚したら、いっそ、どこかへ閉じ込めたほうがいいかな?
海辺の領地はどうだろう?
片方は海だし、山側を封鎖したら、出入りする人間を必要最小限に減らせる。
邪魔者を一切排除し、俺とアデルだけで暮らすんだ。
いいね。早くそうしたい。
本当に近頃はうっとうしいことばかりだからね。
特に、あの王子と護衛騎士。
まあ、護衛騎士のほうは、保護者気取りの単細胞だから、このままだと、自分の気持ちにも一生気づかないだろうから、まだまし。
だけど、あの王子はあなどれない。
弱みをにぎろうと調べたけど、何もでてこない。
しかも、ちょっと油断している隙に、アデルのブルージュ行を決められたしね。
あの、くえない王太子と結託しているのは間違いない。
まあ、アデルに興味を持った時点で、俺の敵。
もし奪いにくるなら、徹底的に後悔させてあげる。
なんなら、国ごとつぶしてあげてもいいしね。
結婚するまであと2年。
本人はまるで気づいてないけど、最近、どんどんきれいになってきて、うるさい視線が多い。
今のところ、早めにつぶしているけど、これから、あの王子みたいな、やっかいな虫もますますわいてくるだろうから、気が重い。
が、誰にも譲る気はないし、もちろん、負けるわけもない。
絶対に離さないからね、アデル。
ユーリの席に、今度は、別の男が近寄ってきた。
「この店と、この店で、ここに書いてあるものを買ってきて」
ユーリはそう言いながら、紙きれを男に渡す。
男は無言で頭をさげると、さっと、立ち去って行った。
もう離れてるのも飽きたし、お土産が用意できたら、そろそろ迎えに行こうかな。
ねえ、アデル。
プライベートが確保されているため、どこでも目をひいてしまユーリにとっては、安心してくつろげる、数少ない行きつけの場所だ。
そんなユーリとは正反対の、印象に残らない顔をした男がそばに立ち、ユーリに話しかけている。
「…ということで、今、アデル王女は、孤児院で料理を手伝っています」
「へえ、変わった観光だね。でも、アデルって、料理できるの?」
ユーリは小首をかしげた。
「卵をわる練習をしていました」
ユーリの彫刻のような美貌に、一瞬だけ、笑みがひろがる。
「その段階? あいかわらず、かわいい。…でも、あの王子がそれを見てるのが、腹立たしいんだけど」
冷気が噴き出し、男は思わず身震いする。
「まあ、いいや。じゃあ、引き続き、アデルの身の安全と、事細かい報告を」
「了解」
そう言って、男は立ち去ろうとしたが、振り返って、にやりと笑った。
「主がいなくても、王女は楽しそうだよ。王子のこと、先生って呼んで、えらく尊敬してたしね。株があがってるよ。うかうかしてられないんじゃない?」
すっかり、口調が変わっている。
「死にたいの? 早く行け」
ユーリから殺気が放たれた。
「こわっ」
そう言うと、男は素早く立ち去った。
その後ろ姿を見て、少年の頃を思い出した。
暗殺に来たのが、今の男だった。
自分と同じ年齢で、すでに暗殺者だと知り、興味をひかれ、破格の待遇でひきぬいた。
まあ、暗殺者はいらないから、自分専用の影としてだけど。
もう長いつきあいになるから、俺のことを熟知している。
が、好みも似ているのか、あいつ、アデルを気に入ってるんだよね。
俺から離れようとすると、やたらと喜ぶ。意味不明だ。
ほんと、アデルは変なやつには特に気に入られるよね。
昔から、どこかへ顔をだしたら、だれでもかれでも、たらしこんで帰ってくるし、面倒なんだよね。
結婚したら、いっそ、どこかへ閉じ込めたほうがいいかな?
海辺の領地はどうだろう?
片方は海だし、山側を封鎖したら、出入りする人間を必要最小限に減らせる。
邪魔者を一切排除し、俺とアデルだけで暮らすんだ。
いいね。早くそうしたい。
本当に近頃はうっとうしいことばかりだからね。
特に、あの王子と護衛騎士。
まあ、護衛騎士のほうは、保護者気取りの単細胞だから、このままだと、自分の気持ちにも一生気づかないだろうから、まだまし。
だけど、あの王子はあなどれない。
弱みをにぎろうと調べたけど、何もでてこない。
しかも、ちょっと油断している隙に、アデルのブルージュ行を決められたしね。
あの、くえない王太子と結託しているのは間違いない。
まあ、アデルに興味を持った時点で、俺の敵。
もし奪いにくるなら、徹底的に後悔させてあげる。
なんなら、国ごとつぶしてあげてもいいしね。
結婚するまであと2年。
本人はまるで気づいてないけど、最近、どんどんきれいになってきて、うるさい視線が多い。
今のところ、早めにつぶしているけど、これから、あの王子みたいな、やっかいな虫もますますわいてくるだろうから、気が重い。
が、誰にも譲る気はないし、もちろん、負けるわけもない。
絶対に離さないからね、アデル。
ユーリの席に、今度は、別の男が近寄ってきた。
「この店と、この店で、ここに書いてあるものを買ってきて」
ユーリはそう言いながら、紙きれを男に渡す。
男は無言で頭をさげると、さっと、立ち去って行った。
もう離れてるのも飽きたし、お土産が用意できたら、そろそろ迎えに行こうかな。
ねえ、アデル。
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