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よく笑えますね
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と、その時、背後がにぎやかになった。
振り返ると、人がむらがっている。
なんだろう?
「ええっと、今日、何かイベントでもあるの?」
ロイドに聞いてみた。
「いえ、何もないはずです」
あれ? あの人のかたまり、こっちへ近づいてきてない?
ロイドは、私を守るように前に立ち、人だかりのほうを凝視しはじめた。
ん? どうしたの? 何かわかった?
だんだん、眉間のしわが深くなってきているよ。
あら、あの人だかり、女性ばかりだわ。
しかも、なにやら、きゃっきゃっしてるわね。
あちこちに、ハートがとんでる気がするんだけど。
なんだか、見慣れた光景ね…。
と、私の横にきたデュラン王子が、
「ふーん、派手な登場だね。…来なくていいのに」
不穏な声でつぶやいた。
えーっと、もしかして? もしかする?!
嫌な予感がばりばりしてきたわ。
マルクを見ると、お菓子をさあーっと片づけている。
服をはたき、食べていた形跡も消してるわ。
いったい、あの人だかりの中心にいるのは、だれでしょうか?
なーんて、クイズ形式にしてみても、気持ちはあがらない。
めんどうなことになりそうで、ため息がでるわ。
ただ一人、師匠は何がおこるのか楽しそうに観察している。
人だかりが私たちの前でとまった。
そして、女性たちの真ん中から、予想通り、魔王がきらびやかに登場!
まわりの女性たちにむかって、
「君たち、助かったよ。案内してくれて、ありがとう」
と、天使の笑みをまきちらした。
きゃーっ!と、悲鳴があがった。
普段、聞きなれている貴族女子のユーリファンより、声が大きい。おなかから声がでてるわね。
うん、なんだか新鮮。
そして、ユーリは今日も外側は完璧ね。
あら、胸をおさえて、苦しそうな人もいる。大丈夫かしら?
魔王に至近距離で接するのは初めてだものね。お大事に。
そして、私たちの前に来たユーリの一言。
「まだ、こんなところにいるの? 仕事が遅いね」
目線は、ロイドに向いている。
もう、いきなり、なんてこというのよ?!
一気に場がぴりついて、肌が痛いじゃない。
私は、いそいで、ロイドの前に立ち、ユーリにびしっと言ってやった。
「それより、ユーリ。何で来たの? 今日は仕事じゃないの?」
「ひどいな、アデル。急いで、終わらせてきたのに」
と、それはそれは、甘ったるく微笑んだ。
まわりのギャラリーから、またもや、悲鳴があがる。
うん、少々、声が大きすぎるわね。耳が痛い…。
「でも、先に教会に行ったから、遅くなったんだ。まさか、まだ、市場でうろついてるなんてね」
うろつくって…、ほんと、やめて! 毒をふくませないで!
天敵を刺激しないで!
が、遅かった。
ロイドが、さっと、私を背中の後ろに隠すようにして、ユーリとの間に立った。
「次期公爵に予定は言ってなかったはずですが? あいかわらず、アデル様につきまとって、気持ちが悪いですね」
うん、確実にゴングがなったわね。
マルクは、また、完全に気配を消している。
デュラン王子は、いつ加わろうか、様子をうかがっている。
そして、師匠。なに、笑ってるんですか?
楽しんでる場合じゃないんですが!
「アデルは、愛する婚約者だからね。でも、君は王太子の騎士でしょ。アデルとは無関係だよね」
ユーリは皮肉な笑みをうかべたまま、ロイドをにらみつける。
「いえ、私の絶対的な主は、一生、アデル様ですから。忠誠は、アデル様に捧げております」
えっ、そうなの? いつの間に、捧げられたのかしら?
「君はアデルの騎士には一生なれないよ。だから、王太子で我慢してね」
ユーリ、我慢って…。ルイ兄様が聞いたら、泣くよ。
「いえ、王太子の騎士は仮です。あなたがどれだけ邪魔しようとも、アデル様の騎士になってみせます」
ロイドも、仮って…。ルイ兄様、本当、ここにいなくて良かったね。
「それより、あなたこそ、一時的な婚約者でしょう。アデル様にふさわしい、すばらしい方があらわれるまでの虫よけです」
ちょっと、ちょっと、ちょっと、ロイドさんっ?!
魔王にむかって、なんて恐ろしいことを言うの?!
「へえー、虫よけ? その虫がよく言うよ」
ユーリから、どっと冷気が流れだす。
寒い、寒すぎる!
マルク、顔色が悪いわ。大丈夫?
デュラン王子、お願いだから、そのままだまっててね!
そんな極寒の中、
ブフォッ!
…師匠だ。
「あ、すまん、すまん…。続けて」
そう言うと、声をころして、笑っている。
ええと、この状況で、よく笑えますね?
振り返ると、人がむらがっている。
なんだろう?
「ええっと、今日、何かイベントでもあるの?」
ロイドに聞いてみた。
「いえ、何もないはずです」
あれ? あの人のかたまり、こっちへ近づいてきてない?
ロイドは、私を守るように前に立ち、人だかりのほうを凝視しはじめた。
ん? どうしたの? 何かわかった?
だんだん、眉間のしわが深くなってきているよ。
あら、あの人だかり、女性ばかりだわ。
しかも、なにやら、きゃっきゃっしてるわね。
あちこちに、ハートがとんでる気がするんだけど。
なんだか、見慣れた光景ね…。
と、私の横にきたデュラン王子が、
「ふーん、派手な登場だね。…来なくていいのに」
不穏な声でつぶやいた。
えーっと、もしかして? もしかする?!
嫌な予感がばりばりしてきたわ。
マルクを見ると、お菓子をさあーっと片づけている。
服をはたき、食べていた形跡も消してるわ。
いったい、あの人だかりの中心にいるのは、だれでしょうか?
なーんて、クイズ形式にしてみても、気持ちはあがらない。
めんどうなことになりそうで、ため息がでるわ。
ただ一人、師匠は何がおこるのか楽しそうに観察している。
人だかりが私たちの前でとまった。
そして、女性たちの真ん中から、予想通り、魔王がきらびやかに登場!
まわりの女性たちにむかって、
「君たち、助かったよ。案内してくれて、ありがとう」
と、天使の笑みをまきちらした。
きゃーっ!と、悲鳴があがった。
普段、聞きなれている貴族女子のユーリファンより、声が大きい。おなかから声がでてるわね。
うん、なんだか新鮮。
そして、ユーリは今日も外側は完璧ね。
あら、胸をおさえて、苦しそうな人もいる。大丈夫かしら?
魔王に至近距離で接するのは初めてだものね。お大事に。
そして、私たちの前に来たユーリの一言。
「まだ、こんなところにいるの? 仕事が遅いね」
目線は、ロイドに向いている。
もう、いきなり、なんてこというのよ?!
一気に場がぴりついて、肌が痛いじゃない。
私は、いそいで、ロイドの前に立ち、ユーリにびしっと言ってやった。
「それより、ユーリ。何で来たの? 今日は仕事じゃないの?」
「ひどいな、アデル。急いで、終わらせてきたのに」
と、それはそれは、甘ったるく微笑んだ。
まわりのギャラリーから、またもや、悲鳴があがる。
うん、少々、声が大きすぎるわね。耳が痛い…。
「でも、先に教会に行ったから、遅くなったんだ。まさか、まだ、市場でうろついてるなんてね」
うろつくって…、ほんと、やめて! 毒をふくませないで!
天敵を刺激しないで!
が、遅かった。
ロイドが、さっと、私を背中の後ろに隠すようにして、ユーリとの間に立った。
「次期公爵に予定は言ってなかったはずですが? あいかわらず、アデル様につきまとって、気持ちが悪いですね」
うん、確実にゴングがなったわね。
マルクは、また、完全に気配を消している。
デュラン王子は、いつ加わろうか、様子をうかがっている。
そして、師匠。なに、笑ってるんですか?
楽しんでる場合じゃないんですが!
「アデルは、愛する婚約者だからね。でも、君は王太子の騎士でしょ。アデルとは無関係だよね」
ユーリは皮肉な笑みをうかべたまま、ロイドをにらみつける。
「いえ、私の絶対的な主は、一生、アデル様ですから。忠誠は、アデル様に捧げております」
えっ、そうなの? いつの間に、捧げられたのかしら?
「君はアデルの騎士には一生なれないよ。だから、王太子で我慢してね」
ユーリ、我慢って…。ルイ兄様が聞いたら、泣くよ。
「いえ、王太子の騎士は仮です。あなたがどれだけ邪魔しようとも、アデル様の騎士になってみせます」
ロイドも、仮って…。ルイ兄様、本当、ここにいなくて良かったね。
「それより、あなたこそ、一時的な婚約者でしょう。アデル様にふさわしい、すばらしい方があらわれるまでの虫よけです」
ちょっと、ちょっと、ちょっと、ロイドさんっ?!
魔王にむかって、なんて恐ろしいことを言うの?!
「へえー、虫よけ? その虫がよく言うよ」
ユーリから、どっと冷気が流れだす。
寒い、寒すぎる!
マルク、顔色が悪いわ。大丈夫?
デュラン王子、お願いだから、そのままだまっててね!
そんな極寒の中、
ブフォッ!
…師匠だ。
「あ、すまん、すまん…。続けて」
そう言うと、声をころして、笑っている。
ええと、この状況で、よく笑えますね?
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