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町へ行く

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昨日のパーティーの後、気を失うように眠ったおかげで、体はスッキリ!
睡眠、大事!

おかげで、昨日の記憶も少しうすれた感じ。
このまま、あの恥ずかしいダンスはなかったことにしよう。
そう、なかった、なかった、なかった…と、暗示をかけながら、食堂にむかう。

朝食の席につくと、今朝は、ルイ兄様と私だけ。
両親は公務でいなかった。

昨日の削られた体力を取り戻すため、もりもり食べていると、
「あっ、そうだ。今日は、一日、デュラン王子に同行してね。町の様子が見たいんだって」
ルイ兄様が、のほほんと言ってきた。

ぐっ! あやうく、パンがのどにつまりそうになった。

「…なんで、私? ルイ兄様が同行すればいいじゃない?」

「そうしたいんだけどね。ぼく、はずせない公務があるんだ。だから、お願いね」
そう言うと、にこにこっと笑った。

いやいや、お願いねって言われても、嫌なんですが…。
昨日の状況、見たでしょ?
また、ややこしいことになる予感しかないんだけど。

「町を案内するなら、私より、ずーっと詳しい人が、いーっぱいいるでしょ? 私は役にたたないよ」

これでどうだ。まっとうな意見だよね! 言い返せまい。ほら、撤回して!

「うん、だから、ロイドをつけることにしたから。アデルは一緒に楽しんでおいで」

ロイドとは、ルイ兄様の専属護衛騎士だ。そして、ルイ兄様の乳兄弟でもある。
私にとっても、兄のような存在だ。

伯爵家次男のロイド。母方の祖父は、町の中心に大きな店をかまえている。
幼い頃から、良く行き来しているからか、町を知りつくしていて、私にも、町ではやっているお菓子をよく買ってきてくれる。

それに、剣の腕もすごい。護衛も兼ねられるし、他国の要人に同行するには、確かに最適だと思う。

でも、なぜかしら? デュラン王子と混ぜあわせたら、これまた危険な香りがプンプンするわ。
その場にいたくないわね。うん、逃げよう。

「じゃ、ロイドだけでいいじゃない。私が行かなくても」

すると、ルイ兄様は、首をよこにふった。
「ダメダメ。デュラン王子のご指名だから」

ルイ兄様…、やっぱり、魔王にとりこまれていることは確定したわね。
いいなりじゃない!

ということで、今、私は、王室所有の馬車の中にいます。
目の前には、デュラン王子が、すわっておられます。
今日も今日とて、まぶしいお姿です。

そして、なぜか、私の隣には、…マルクが!
情報をつかんだユーリが、自分も同行しようとしたらしいけれど、仕事のためにどうしても行けず。
マルクを無理矢理おしこんできたみたい。

色々、気の毒なマルク。目が死んでるよ…。
ここへ来るまでのユーリからうけただろう苦労がしのばれるわね。

そして、ロイドはとういうと、馬にのり、馬車を先導している。
ということで、まだ、二人はちゃんと会話をしていない。

ほんと、今日、大丈夫かな? ドキドキがとまらないわ。もちろん、悪い意味で。

とりあえず、まずは、マルクをちゃんと紹介しなきゃね。

「デュラン王子、こちらが、ロンバルト公爵家のマルクです」

デュラン王子は、にこやかに言った。
「じゃあ、君が次期公爵の弟さんなんだね。似てないね。…君とは友達になれそうだ」

いきなり、なにか、毒をふくんでますが…。

そして、マルク。顔がひきつってるよ。とりあえず、なんでもいいからしゃべって!

「ロ、…ロンバルト公爵家の次男、マルクと申します。今日は兄から無理矢理、…いえ、兄の代理できました。よろしくお願いいたします。デュラン王子殿下」

「うん、こちらこそよろしく。大変だねー、お目付け役? まあ、一緒に楽しもうね。うーん、でも、なんか固いなあ、その呼び方。今日は、町の中を気軽に楽しみたいんだよね」

「はあ…」
マルクは間の抜けた声で、あいづちをうつ。

「だから、こうしない? 二人とも、町では、ぼくをデューさんって呼んでよ」

「「はああ?」」

思わず、マルクと声がかぶってしまった。

そんな私たちを見て、デュラン王子は、
「二人は息がぴったりだね。やけちゃう」
と、意味深にウインクした。

天使もびっくりのきれいなウインクで、馬車の中が、一気に、甘さでいっぱいになる。
甘すぎて、むせかえりそう…。
ほら、マルクなんて、ふるえてるわ。

恐ろしい。ウインクひとつで、なんて武器なの! 
さすが魔王ね。ほんとに油断ならないわ。
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