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今年の春
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帰ってきた私が、一番にすることはもう決まっている。
手のひらににぎっていた妖精の石を見て、しっかりとにぎりなおす。
冬樹君と会って、話したい!
今は春休みだから、どこに行けば冬樹君に会えるかわからない。でも、いてもたってもいられない。
春休みが終わるのを待つには長すぎる。
とりあえず、図書館に行ってみよう。冬樹君と会っていた場所だから。
私はうちの隣にある図書館に向かおうと、門をとびだした時、「はるちゃん」と、うしろから声がした。
ふりかえると、みどり色のトートバッグを持った冬樹君が立っていた。
「冬樹君……」
あまりのタイミングに驚いてしまって、とっさに言葉がでてこない。
「はるちゃん、学校を休んで、そのまま春休みになったから心配で……。やっぱり、僕が帰ってきたから? 2年前のこと、まだ、おこってる……?」
今にも泣きだしそうな冬樹君の顔。
あの時とおなじ顔だ。
私は、思いっきり首を横にふった。
「冬樹君、あの時は、あんなひどいこといってごめんなさい! 冬樹君の言ったことを信じなくて、友だちじゃないなんて言って、本当にごめんなんさい!」
今度は、冬樹君のほうが首を横にふった。
「ううん。倉重さんが、なんで、僕から聞いたって言ったかはわからない。でも、僕たちの会話を知ってたのは、本棚をはさんだところにいたから聞こえたんだろうって。僕の声が大きかったから……。親友のゆうたが、たまたま見ていて、後から聞いた。でも、冷静になると、はるちゃんが僕が約束をやぶって話したと思っても仕方がないって思った。だから、はるちゃんとは離れたままでいたほうがいいのかもって思った。はるちゃんをすごく傷つけたから。……でも……、でもね、僕、やっぱり、はるちゃんと友達でいたいんだ。2年ぶりに会って、はるちゃんの顔をみたら、そう思った。はるちゃんと図書館でいっぱい話して、楽しかった時のことばかり思い出すんだ」
「冬樹君……。ずるい」
「え?」
「だって、先に言うんだもん」
「えっ? どういうこと?」
「私も、やっぱり、冬樹君と友達でいたいって思ったから。あの時、信じなかったのは本当にごめんなさい! 今は信じてる。冬樹君が約束を破る人じゃないって」
「ほんと……?」
「うん。それに、妖精の話ができるのって、冬樹君しかいないよ」
そういって、私は握っていた手のひらを冬樹君にひろげてみせた。
「あ、その石! 妖精の石! はるちゃん、まだ、持っててくれたの!?」
驚いた様子の冬樹君。
「うん。といっても、この2年間は、引き出しの中に入れたままにしてたんだけどね……。でも、すごいことがわかったよ。この石、妖精の羽の影がやきついたんだって! 妖精に教えてもらった」
「ええ!? それってどういうこと?」
「長い話になるけどいい?」
「うん、もちろん! 聞かせて、はるちゃん!」
「じゃあ、うちの庭のケヤキのところで話してもいい?」
「あ、前に見せてもらったケヤキだよね」
「うん、ケヤキの下に小さなベンチがあるから、そこで話したい。多分、ケヤキの妖精も聞いてると思うから」
「ケヤキの妖精!?」
冬樹君の瞳がきらきらと輝きだす。
「うん、うちのケヤキにいるんだよ。じゃあ、一緒にきて」
その時、ふわりと風が顔にあたった。
いつのまにか、風があたたかくなっている。
遅かった今年の春がやっときた。
(了)
※読みづらいところも多々あったかと思いますが、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、いいねをくださった方、投票していただいた方、本当に励みになりました。感謝でいっぱいです。ありがとうございました!
手のひらににぎっていた妖精の石を見て、しっかりとにぎりなおす。
冬樹君と会って、話したい!
今は春休みだから、どこに行けば冬樹君に会えるかわからない。でも、いてもたってもいられない。
春休みが終わるのを待つには長すぎる。
とりあえず、図書館に行ってみよう。冬樹君と会っていた場所だから。
私はうちの隣にある図書館に向かおうと、門をとびだした時、「はるちゃん」と、うしろから声がした。
ふりかえると、みどり色のトートバッグを持った冬樹君が立っていた。
「冬樹君……」
あまりのタイミングに驚いてしまって、とっさに言葉がでてこない。
「はるちゃん、学校を休んで、そのまま春休みになったから心配で……。やっぱり、僕が帰ってきたから? 2年前のこと、まだ、おこってる……?」
今にも泣きだしそうな冬樹君の顔。
あの時とおなじ顔だ。
私は、思いっきり首を横にふった。
「冬樹君、あの時は、あんなひどいこといってごめんなさい! 冬樹君の言ったことを信じなくて、友だちじゃないなんて言って、本当にごめんなんさい!」
今度は、冬樹君のほうが首を横にふった。
「ううん。倉重さんが、なんで、僕から聞いたって言ったかはわからない。でも、僕たちの会話を知ってたのは、本棚をはさんだところにいたから聞こえたんだろうって。僕の声が大きかったから……。親友のゆうたが、たまたま見ていて、後から聞いた。でも、冷静になると、はるちゃんが僕が約束をやぶって話したと思っても仕方がないって思った。だから、はるちゃんとは離れたままでいたほうがいいのかもって思った。はるちゃんをすごく傷つけたから。……でも……、でもね、僕、やっぱり、はるちゃんと友達でいたいんだ。2年ぶりに会って、はるちゃんの顔をみたら、そう思った。はるちゃんと図書館でいっぱい話して、楽しかった時のことばかり思い出すんだ」
「冬樹君……。ずるい」
「え?」
「だって、先に言うんだもん」
「えっ? どういうこと?」
「私も、やっぱり、冬樹君と友達でいたいって思ったから。あの時、信じなかったのは本当にごめんなさい! 今は信じてる。冬樹君が約束を破る人じゃないって」
「ほんと……?」
「うん。それに、妖精の話ができるのって、冬樹君しかいないよ」
そういって、私は握っていた手のひらを冬樹君にひろげてみせた。
「あ、その石! 妖精の石! はるちゃん、まだ、持っててくれたの!?」
驚いた様子の冬樹君。
「うん。といっても、この2年間は、引き出しの中に入れたままにしてたんだけどね……。でも、すごいことがわかったよ。この石、妖精の羽の影がやきついたんだって! 妖精に教えてもらった」
「ええ!? それってどういうこと?」
「長い話になるけどいい?」
「うん、もちろん! 聞かせて、はるちゃん!」
「じゃあ、うちの庭のケヤキのところで話してもいい?」
「あ、前に見せてもらったケヤキだよね」
「うん、ケヤキの下に小さなベンチがあるから、そこで話したい。多分、ケヤキの妖精も聞いてると思うから」
「ケヤキの妖精!?」
冬樹君の瞳がきらきらと輝きだす。
「うん、うちのケヤキにいるんだよ。じゃあ、一緒にきて」
その時、ふわりと風が顔にあたった。
いつのまにか、風があたたかくなっている。
遅かった今年の春がやっときた。
(了)
※読みづらいところも多々あったかと思いますが、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
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