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何故ですか?

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あわただしく午前中をすごし、昼食を終え、ついにルビーさんがやってくる時間がせまってきた!
ワクワクがとまらない私。

なのに、ルビーさんをお迎えすることなく、応接室に呼ばれた。
約束の時間よりも早く、王太子様がやってきたそう。

ワクワクしていた気分が下がっていく…。

「ルシェル様、応接室までご案内いたします」
と、今日から私の護衛騎士となったジャックが言う。

ご案内って…知ってるけど? というか、ジャック、どうしたの?
さっきから様子がおかしい。

普段は気さくで、にこにこしてる印象のジャック。
なのに、パキンパキンとした動きで、にこりともしない。

「ええと、普段の感じと違いすぎるけど? ジャック、どうかした?」
廊下を歩きながら聞いてみた。

「俺は、今日から筆頭聖女様の専属護衛騎士として、ルシェルに最大限の敬意を払うことにした!」

「いや…、今までどおりでいいよ? というか、今まで通りのほうがいいよ?!」

「いえ、そういうわけにはいかない! なので、気にしないでくれ。…というか、お気遣いなく、ルシェル様!」
ジャックが、ぴしりと言った。

「あのね、ノアだって、外へでて、人前の時だけ敬語だったし、神殿の中は、今まで通り気楽に話してよ」

すると、ジャックが、私をしっかり見ていいきった。
「親しいノアとはいえ、奴はライバル。筆頭聖女の専属護衛騎士になった以上は、もう、ぜーったいに譲らない!」

めらめらとやる気をだしているジャック。

そんなところ悪いけれど、私の夢も譲れない! 
速やかに、ルビーさんに筆頭聖女の役目を引き継がないと!

つまり、遠くない未来、ノアがまた、筆頭聖女ルビーさんの専属護衛騎士になってしまうのよね…。
ということで、短い間になるけど、ごめんなさいね、ジャック…。

と、心の中でしっかりと謝ったところで、応接室の前に着いた。

ドアの前には、顔なじみの近衛騎士のお二人が護衛として立っていた。
つまり、王太子様がこの中にいらっしゃるということ…。

私を見るなり、しゃきんと頭をさげてご挨拶してくれたお二人。
私もご挨拶をお返しするが、隣で、同じように、しゃきんと頭をさげるジャック。

だらっとしたノアの時とは大違いだわ…。

私はひとつ深呼吸をして、ノックをした。
間髪入れず、扉が開いた。え、待ってた…?

「どうぞ、ルシェル様」
迎えてくれたのは、王太子様の従者のアルバートさんだ。

「失礼いたします」
そう言って、応接室に足をふみいれる。

すでに椅子に座り、こちらを向いている王太子様。
まぶしいばかりの黄金の髪の毛は、ゆるやかにウエーブして、瞳の色は、宝石のような濃い紫色。
私も紫色の瞳だけど、うすーい色。同じ系統の色とは思えないほど、王太子様の瞳からは高貴さが漏れだしている。

そして、男女を超越したような美しすぎるお顔。
久しぶりに見ると、まぶしすぎて、直視できない…。目が痛い…。

ということで、もう、帰ってもいいかしら?

できるだけ、ゆっくり歩くけど、王太子様のおられるテーブルまですぐにたどりついた。

アルバートさんが、素早く、椅子をひいてくれた。
「ありがとうございます、アルバートさん」
そう言って、王太子様の真向かいの席にすわった。

そして、王太子様にご挨拶。
「お久しぶりでございます。王太子様」

すると、王太子様は、優雅に微笑んで言った。
「本当に久しぶりですね、ルシェル」

ぞわりと肌が泡立った。
もしかして、王太子様、ご機嫌ななめじゃない?!
顔は微笑んでるけど、全然笑ってないわよね?! 
何故ですか?!

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