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アルがやってきて…
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そして、その日の午後、アルがやってきた。
目覚めた私を見た瞬間、ほっとしたようにため息をついた。
「ほんと良かった…。無茶しすぎだろ。心配させるな…」
そう言って、紫色の瞳を揺らした。
「ごめん…。それと、助けてくれてありがとう。でも、なんで、アルは、あそこにいたの?」
「ライラからパトリックの話を聞いて、心配だからパトリックの学園での様子を調べてみるって、前に言っただろ」
「あ…、そう言えば、そんなこと言ってたね」
「あれから、すぐに調べた。すると、学園では、二人が一緒にいることが多くなっていて、恋人だと噂になりはじめていた。が、留学しているパトリックの兄のルドルフにも探りを入れると、パトリックはライラにかなり執着していて、他の女に目がいくはずがない、そんなことは信じられないとはっきり言った」
「え? 執着? 私に…?」
「ああ、そうだ。小さい頃からライラしか目に入ってなかったそうだ。絶対にあり得ない、誤解だと言っていたぞ。だから、何かおかしい気がして、更に詳しく調べようと思っていた時、ライラが王都にきて、パトリックの家のパーティーに行くと耳にしたんだ。
…そうだ、ライラ。俺は怒ってる! 王都に来るなら来るで、俺に連絡しろよ! 水くさいだろ。母上も同じことを言ってたぞ」
「いやいや、だって、王族だよ?! 辺境でお隣さんとして会うのとは違って、さすがに、気軽に連絡はできないよね?!」
「そんなこと言って、ライラのことだから連絡が面倒なだけなんだろ? 花の世話以外は、ずぼらだもんな」
じとっとした目で見てくるアル。
「ちょっと、失礼な…! 私だって、案外、ちゃんとしてるよ! …まあ、…多分…、それなりにはね?
…ほら、それより、先を続けて。私が公爵家のパーティーに行くと耳にして、それからどうしたの?」
「クールド公爵家のパーティーなら、ボリス子爵家の娘も来るだろうと思ったんだ。ボリス子爵家は、パトリックの家の下請けみたいな仕事もしてるからな。そう思ったら、嫌な予感がした。あわてて、招待状をルドルフ経由で用意して、パーティーへ行ったんだ。少し遅れて会場に入ったが、すでに、パトリックと、パトリックに絡みつく女が注目の的になっていた。俺は、できるだけ目立たないように、遠くから様子を見ていたんだが、あの二人が移動しはじめ、その後ろをつけていくライラが見えたから、あわてて追いかけた。
やっと追いついたら、階段からライラが落ちてくるし…! ぎりぎりでなんとか受け止められたから良かったものの、もう少し遅かったらと思ったら、本当にぞっとしたんだぞ…。
あの時、俺の寿命は、確実に短くなったな。どう責任とってくれる?!」
そう言って、私にずいっと近づくと、鋭い眼差しで私を見おろした。
確かに、階段から人がふってきたら…、うん、恐ろしすぎるわ。
私は、がばっと頭をさげた。
「ご心配をおかけしました! ごめんなさい!」
すると、頭にポンと手をおかれた。
頭をあげると、優しい目で私を見つめながら、
「ほんとに間に合って良かった…。ライラが無事で良かった…。パーティーに行くと決めたあの時の俺。よくやった! とりあえず、生存確認をさせてくれ」
アルは、そう言うと、私の頭をぐりぐりとなではじめた。
綿毛のような、ふわふわの私の髪が、ぐしゃぐしゃになっても、一心不乱になで続けるアル。
アルのおかげで、今、私はこうしていられるんだよね…。
「ありがとう、アル!」
私は心からのお礼を言うと、背伸びをして、更に、手を思いっきりのばした。
そして、アルの漆黒の髪をなで返す。
驚いた顔のアルと目があう。思わず笑みがこぼれた。
同時に、パトリックとのこれまでのことも色々こみあげてきて、自然と涙がでた。
泣きながら笑う私を、アルはだまって見守ってくれた。
※ 読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
次回が最終回になります。なんとか、今日中に最終回を更新したいと思っております。
目覚めた私を見た瞬間、ほっとしたようにため息をついた。
「ほんと良かった…。無茶しすぎだろ。心配させるな…」
そう言って、紫色の瞳を揺らした。
「ごめん…。それと、助けてくれてありがとう。でも、なんで、アルは、あそこにいたの?」
「ライラからパトリックの話を聞いて、心配だからパトリックの学園での様子を調べてみるって、前に言っただろ」
「あ…、そう言えば、そんなこと言ってたね」
「あれから、すぐに調べた。すると、学園では、二人が一緒にいることが多くなっていて、恋人だと噂になりはじめていた。が、留学しているパトリックの兄のルドルフにも探りを入れると、パトリックはライラにかなり執着していて、他の女に目がいくはずがない、そんなことは信じられないとはっきり言った」
「え? 執着? 私に…?」
「ああ、そうだ。小さい頃からライラしか目に入ってなかったそうだ。絶対にあり得ない、誤解だと言っていたぞ。だから、何かおかしい気がして、更に詳しく調べようと思っていた時、ライラが王都にきて、パトリックの家のパーティーに行くと耳にしたんだ。
…そうだ、ライラ。俺は怒ってる! 王都に来るなら来るで、俺に連絡しろよ! 水くさいだろ。母上も同じことを言ってたぞ」
「いやいや、だって、王族だよ?! 辺境でお隣さんとして会うのとは違って、さすがに、気軽に連絡はできないよね?!」
「そんなこと言って、ライラのことだから連絡が面倒なだけなんだろ? 花の世話以外は、ずぼらだもんな」
じとっとした目で見てくるアル。
「ちょっと、失礼な…! 私だって、案外、ちゃんとしてるよ! …まあ、…多分…、それなりにはね?
…ほら、それより、先を続けて。私が公爵家のパーティーに行くと耳にして、それからどうしたの?」
「クールド公爵家のパーティーなら、ボリス子爵家の娘も来るだろうと思ったんだ。ボリス子爵家は、パトリックの家の下請けみたいな仕事もしてるからな。そう思ったら、嫌な予感がした。あわてて、招待状をルドルフ経由で用意して、パーティーへ行ったんだ。少し遅れて会場に入ったが、すでに、パトリックと、パトリックに絡みつく女が注目の的になっていた。俺は、できるだけ目立たないように、遠くから様子を見ていたんだが、あの二人が移動しはじめ、その後ろをつけていくライラが見えたから、あわてて追いかけた。
やっと追いついたら、階段からライラが落ちてくるし…! ぎりぎりでなんとか受け止められたから良かったものの、もう少し遅かったらと思ったら、本当にぞっとしたんだぞ…。
あの時、俺の寿命は、確実に短くなったな。どう責任とってくれる?!」
そう言って、私にずいっと近づくと、鋭い眼差しで私を見おろした。
確かに、階段から人がふってきたら…、うん、恐ろしすぎるわ。
私は、がばっと頭をさげた。
「ご心配をおかけしました! ごめんなさい!」
すると、頭にポンと手をおかれた。
頭をあげると、優しい目で私を見つめながら、
「ほんとに間に合って良かった…。ライラが無事で良かった…。パーティーに行くと決めたあの時の俺。よくやった! とりあえず、生存確認をさせてくれ」
アルは、そう言うと、私の頭をぐりぐりとなではじめた。
綿毛のような、ふわふわの私の髪が、ぐしゃぐしゃになっても、一心不乱になで続けるアル。
アルのおかげで、今、私はこうしていられるんだよね…。
「ありがとう、アル!」
私は心からのお礼を言うと、背伸びをして、更に、手を思いっきりのばした。
そして、アルの漆黒の髪をなで返す。
驚いた顔のアルと目があう。思わず笑みがこぼれた。
同時に、パトリックとのこれまでのことも色々こみあげてきて、自然と涙がでた。
泣きながら笑う私を、アルはだまって見守ってくれた。
※ 読んでくださっている方、本当にありがとうございます!
次回が最終回になります。なんとか、今日中に最終回を更新したいと思っております。
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