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心配かけて、ごめんなさい
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私は、椅子にすわったコリーヌ様の前に立ち、両手をかざして、黒い煙を取り始める。
円を描くように動かしながら、手のひらで、すい取っていく。
でも、濃い黒い煙は、がっしりと、しがみつくようについている。
こんなに取りにくいのは初めてかもしれない。
手の動きを変えながら、集中して、根気よく、両手を動かしていく。
何重にも重なって、濃く固まっている印象を受ける黒い煙が、だんだんゆるくなり、動きはじめた。
よし、これで取れる!
私は、一気に黒い煙を手のひらの方へとすいこむイメージをする。
すると、イメージどおり、黒い煙がどんどん私の手の中へとすいこまれ始めた。
それを、しばらく続けて、やっと、最後まですいとれた。
もう、黒い煙は残ってない。
「全部、とれました!」
嬉しくて声をあげた瞬間、体中の力がぬけ、その場にすわりこんだ。
「ライラ! 大丈夫か?!」
と、アルが駆け寄ってきて、私を抱きかかえると、長椅子に横にならせてくれた。
そして、ハンカチで私の顔を優しくぬぐってくれる。
どうやら、汗をいっぱいかいていたみたい。気づかなかった…。
横になっている私をのぞきこんだコリーヌ様。
「ライラちゃん、頭の痛みがすっかり取れたわ。しかも霧がかかったような感じもしてたのに、頭もすっきりして、嘘のように元気になったわ! 本当に本当にありがとう…」
そう言って、涙をぬぐうコリーヌ様。
「良かった…!」
そう言って、起き上がろうとしたら、ぐらっと体が揺れた。
そばにいたアルが、とっさに支えてくれた。
「おい、ライラ! 大丈夫か?!」
心配そうに聞く。
「心配かけて、ごめん。大丈夫だよ。こんなに強固な黒い煙を取ったのは初めてだったから…。でも、この部屋には、お花がいっぱいだから、すぐに治るよ」
すると、コリーヌ様が、さーっと走った。
横になったまま、その様子を見ながら、すごい元気になっていることに嬉しくなる。
コリーヌ様は、優しい香りのお花を数本とってきてくれて、私のそばに持ってきてくれた。
「近くに置いておきましょうか?」
と、声をかけてくれる。
私がうなずくと、お花を近くに置いてくれた。
「ゆっくり休んでろ。してほしいことがあれば、なんでも言ってくれ」
と、アルの声が聞こえた。
「うん、ありがと…」
そう答えたのを最後に、私の意識が落ちた。
目が覚めると、見知らぬ天井が目に入ってきた。
うーん、ここはどこ?
起き上がると、私はふっかふかのベッドに寝かされてたみたいで、まわりを取り囲むように沢山のお花が飾られている。
きれいなんだけど…、私、もしや、死んでる?
ここは天国かな?
と、思ったら、花の向こうに座っているアルが見えた。
「ライラ! 大丈夫か?!」
と、すぐに駆け寄ってきた。
私はベッドを降りながら、
「あ、大丈夫! すっかり元気だよ! それより、アル。もしかして、そこで、私が目が覚めるのを、ずっと待っててくれたの?」
と聞くと、
「当たり前だろ! はあー、ほんと、ライラが気がついて良かった」
そう言うと、私をふわりと抱きしめた。
…え? ちょっと、アル?!
カッチンコッチンになってる私に気がついて、アルが、あわてて離れた。
「悪い! ほっとしすぎて、思考能力がとまってた…」
一気に顔が熱くなった。
「ライラちゃん、気がついた?!」
そこへコリーヌ様が入ってきた。
そして、ベッドから降りて立っている私を見て、あわててかけよってきた。
「ライラちゃん、大丈夫?! どこも辛くない?」
心配そうに、私の顔をのぞきこむ。
「もう、すっかり良くなりました。ご心配かけてすみません」
「何を言うの。こちらこそ、ごめんなさいね。私のために、倒れるまで能力を使ってもらって…。
あら、顔が赤いわね。熱があるのかしら」
そう言って、私の額に手をあてた。
ええと、それは違います…。
隣で、アルが気まずそうに目をそらした。
まだ心配そうなコリーヌ様が、私の全身を見て、チェックしている。
そして、手を見た時、
「ライラちゃん、手をにぎりしめてるけど、手をどうかした?」
と、聞いてきた。
あ、そうか…。右手を、ぎゅっとにぎりしめてるもんね。
私は、二人に見えるように手をひらいた。
「これが、コリーヌ様の黒い煙をすい取ってできた、花の種です」
二人とも息をのんだ。
私の手いっぱいの大きさで、でこぼこした花の種。
血のような赤い色に、黒い模様というか紋様みたいなものが、いくつも浮かび上がっている。
最初に取った時の種は、小さすぎて、よくわからなかったけれど、大きくなったので、はっきりとわかる。
アルは鋭い目で、種を見て考え込んだ。
「どうしたの?」
と、私が聞くと、
「この紋様がね、見覚えのある紋章に似てるんだ…。これは、邪気というより、呪いだったんじゃ…」
と、アルが言いかけたところを、コリーヌ様が厳しい口調で止めた。
「うかつに言うことじゃありませんよ、アル。ライラちゃんを巻き込まないようにね」
「あの…、通常は、この種は全て私が集めて植えるんですが、もしや、いりますか?」
と、私が聞くと、
「いや、証拠にはならないから、ライラが持っててもらっていい。でも、植えるのはちょっと待っててくれないか? 確認したいことがあるから」
「わかった。保存しておくね」
と、約束した。
円を描くように動かしながら、手のひらで、すい取っていく。
でも、濃い黒い煙は、がっしりと、しがみつくようについている。
こんなに取りにくいのは初めてかもしれない。
手の動きを変えながら、集中して、根気よく、両手を動かしていく。
何重にも重なって、濃く固まっている印象を受ける黒い煙が、だんだんゆるくなり、動きはじめた。
よし、これで取れる!
私は、一気に黒い煙を手のひらの方へとすいこむイメージをする。
すると、イメージどおり、黒い煙がどんどん私の手の中へとすいこまれ始めた。
それを、しばらく続けて、やっと、最後まですいとれた。
もう、黒い煙は残ってない。
「全部、とれました!」
嬉しくて声をあげた瞬間、体中の力がぬけ、その場にすわりこんだ。
「ライラ! 大丈夫か?!」
と、アルが駆け寄ってきて、私を抱きかかえると、長椅子に横にならせてくれた。
そして、ハンカチで私の顔を優しくぬぐってくれる。
どうやら、汗をいっぱいかいていたみたい。気づかなかった…。
横になっている私をのぞきこんだコリーヌ様。
「ライラちゃん、頭の痛みがすっかり取れたわ。しかも霧がかかったような感じもしてたのに、頭もすっきりして、嘘のように元気になったわ! 本当に本当にありがとう…」
そう言って、涙をぬぐうコリーヌ様。
「良かった…!」
そう言って、起き上がろうとしたら、ぐらっと体が揺れた。
そばにいたアルが、とっさに支えてくれた。
「おい、ライラ! 大丈夫か?!」
心配そうに聞く。
「心配かけて、ごめん。大丈夫だよ。こんなに強固な黒い煙を取ったのは初めてだったから…。でも、この部屋には、お花がいっぱいだから、すぐに治るよ」
すると、コリーヌ様が、さーっと走った。
横になったまま、その様子を見ながら、すごい元気になっていることに嬉しくなる。
コリーヌ様は、優しい香りのお花を数本とってきてくれて、私のそばに持ってきてくれた。
「近くに置いておきましょうか?」
と、声をかけてくれる。
私がうなずくと、お花を近くに置いてくれた。
「ゆっくり休んでろ。してほしいことがあれば、なんでも言ってくれ」
と、アルの声が聞こえた。
「うん、ありがと…」
そう答えたのを最後に、私の意識が落ちた。
目が覚めると、見知らぬ天井が目に入ってきた。
うーん、ここはどこ?
起き上がると、私はふっかふかのベッドに寝かされてたみたいで、まわりを取り囲むように沢山のお花が飾られている。
きれいなんだけど…、私、もしや、死んでる?
ここは天国かな?
と、思ったら、花の向こうに座っているアルが見えた。
「ライラ! 大丈夫か?!」
と、すぐに駆け寄ってきた。
私はベッドを降りながら、
「あ、大丈夫! すっかり元気だよ! それより、アル。もしかして、そこで、私が目が覚めるのを、ずっと待っててくれたの?」
と聞くと、
「当たり前だろ! はあー、ほんと、ライラが気がついて良かった」
そう言うと、私をふわりと抱きしめた。
…え? ちょっと、アル?!
カッチンコッチンになってる私に気がついて、アルが、あわてて離れた。
「悪い! ほっとしすぎて、思考能力がとまってた…」
一気に顔が熱くなった。
「ライラちゃん、気がついた?!」
そこへコリーヌ様が入ってきた。
そして、ベッドから降りて立っている私を見て、あわててかけよってきた。
「ライラちゃん、大丈夫?! どこも辛くない?」
心配そうに、私の顔をのぞきこむ。
「もう、すっかり良くなりました。ご心配かけてすみません」
「何を言うの。こちらこそ、ごめんなさいね。私のために、倒れるまで能力を使ってもらって…。
あら、顔が赤いわね。熱があるのかしら」
そう言って、私の額に手をあてた。
ええと、それは違います…。
隣で、アルが気まずそうに目をそらした。
まだ心配そうなコリーヌ様が、私の全身を見て、チェックしている。
そして、手を見た時、
「ライラちゃん、手をにぎりしめてるけど、手をどうかした?」
と、聞いてきた。
あ、そうか…。右手を、ぎゅっとにぎりしめてるもんね。
私は、二人に見えるように手をひらいた。
「これが、コリーヌ様の黒い煙をすい取ってできた、花の種です」
二人とも息をのんだ。
私の手いっぱいの大きさで、でこぼこした花の種。
血のような赤い色に、黒い模様というか紋様みたいなものが、いくつも浮かび上がっている。
最初に取った時の種は、小さすぎて、よくわからなかったけれど、大きくなったので、はっきりとわかる。
アルは鋭い目で、種を見て考え込んだ。
「どうしたの?」
と、私が聞くと、
「この紋様がね、見覚えのある紋章に似てるんだ…。これは、邪気というより、呪いだったんじゃ…」
と、アルが言いかけたところを、コリーヌ様が厳しい口調で止めた。
「うかつに言うことじゃありませんよ、アル。ライラちゃんを巻き込まないようにね」
「あの…、通常は、この種は全て私が集めて植えるんですが、もしや、いりますか?」
と、私が聞くと、
「いや、証拠にはならないから、ライラが持っててもらっていい。でも、植えるのはちょっと待っててくれないか? 確認したいことがあるから」
「わかった。保存しておくね」
と、約束した。
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