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つい癖が……

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お昼休みは、いつもの4人で、学園のカフェでランチを食べることが多い私たち。
今日もそうしていると、いきなり、ルーファスが言った。

「急だけど、明日から1週間、学園にこれなくなったんだ」

ルーファスのお父様である公爵様は王弟。
あとをつぐルーファスもなにかと忙しく、学園も時々休むんだけど、一週間も休むなんて、記憶にない。

「もしかして、どこか悪いの、ルーファス……?」

心配のあまり、とっさに私は椅子からたちあがり、テーブルごしに、ルーファスのほうに身をのりだした。
ルーファスの額に手をあてて、間近で顔色を観察する。

「うん、熱はないわ。顔色もよさそう」

「はいはい、ララ。ちょっと落ち着いて。そんなにルーファスに顔をひっつけたら、みんなびっくりしてるからね」
と、隣にいたアイリスに、肩をおさえられて椅子に座らされた私。

はっとしてまわりを見ると、視線が集中している。

あ、しまった……。ここは学園のカフェ。

あの誘拐未遂事件のあと、時折、体調が悪くなっていたルーファス。
私は心配で心配で、一時期、ルーファスの額に手をあてたり、顔色をじっと見て確認するのが癖になってたのよね。  

「ごめんね、ルーファス。つい、小さい頃のくせがでちゃって……」

「ううん。ララに心配してもらえて嬉しい。やっぱり、ララと一緒だと元気がでるね。ありがとう、ララ」

とろけるように微笑んできたルーファス。
その笑顔に、小さい頃のルーファスを思い出す。

ルーファスの具合が悪くなると、私はすぐにかけつけた。

「そばにいて、ララ……。ぼくの手、にぎってて、ララ……」

すごく苦しそうなのに、私の手を、ぎゅうぎゅうとにぎってくるルーファス。

私は元気がとりえだから、この手をとおして、自分の元気を全部わけてあげられたらいいのに、そう願いながら、いつも手をにぎりかえしていたんだよね。

やっと、苦しみの波がすぎたとき、必ず、ルーファスが言うの。

「ララが一緒にいてくれたから、ぼく、元気になれた。ありがとう、ララ」

やつれてるのに、天使みたいに微笑む、ルーファス。
あー、思い出しただけで、ルーファスの健気さに胸がしめつけられる。

その時、ふっと私の両頬があたたかくなった。

うん……なに? 

はっとして、意識を今にもどすと、え……ルーファス?
サファイア色のきれいな瞳が、すぐ目の前にあった。

「僕は大丈夫だから。そんな、泣きそうな顔をしないで。ね、ララ」

「あ、そうか。今、私、泣きそうだったんだ……」
と、言いかけたところで、まわりがものすごくざわついていることに気が付いた。

「ちょっと、ルーファス! 何、学園のカフェで暴走してるの!? ほんと、やめてよね。早く、ララの顔から手をはなしなさい! ララがまた妬まれるでしょうが。ほら、グレン。のんきに笑って見てないで、ルーファスの両手を全力で叩き落して!」

アイリスがてきぱきと指示をとばす。

そこでやっと理解した。
自分の顔が、テーブル越しに身をのりだしたルーファスの両手につつまれていることを。

あわてて、ルーファスの両手からのがれて、椅子に深く沈み込むように座り、みんなの視界から隠れる。
が、すでに遅かった。

まわりからは悲鳴があがっている。
ルーファスファンの心の叫びが……。

私としたことが役目を忘れて、うっかりしてたわ。
女子生徒たちの視線から盾になるのが私の役目なのに、ルーファスを更に目立たせてどうする!


その後は、目立たないよう静かにランチを食べた私たち。
食べ終えたころには、いつものように、カフェ内も静かになっていた。

私はお茶を飲みながら、ルーファスに聞いた。

「じゃあ、ルーファスはなんで明日から一週間も休むの?」

「それが来客があってね。といっても、公爵家のほうじゃなくて、王宮のほう。急遽、僕が案内することになったんだ。王命だから断れなくて……」

どんな仕事も淡々とこなすルーファスが、珍しく、憂鬱そうな顔をしたのがひっかかった。

王命で、ルーファスが学園を休んでまで案内する方?
一体、だれなんだろう……。 




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