上 下
7 / 10
あぁ!アリス様、お許しを!!

俺は全てを悟ってしまった…。て、全てを悟れる人間なんかいるかい!?

しおりを挟む
「キミは何でそんなに危険察知能力が低いのかな~?」
ミルドレットに連れられて城のたぶん真ん中当たりにあるであろう広場にやってきた。何故「あるであろう」などと不確かな物言いなのかと言うと、それはこの城が思った以上に広すぎて構造がまるで分からないから。ここまで来るのだって10分以上はかかっている。
「危険察知能力ってそんな、俺はただ質問しようとしただけだし」

「あのね、ケン。アリスに冷たい視線を送られたら、その時は素早く行動をしないとダメだよ。死ぬより恐ろしい罰が待ってるからね?」
ミルドレッドは両腕を抱き抱えながらわざとらしく震えて見せた。
「そんな大げさな…死ぬと言えばさっきの話、何で男は首輪がないとダメなんだよ?」

「あぁ、それね。それは自分の目で見た方が分かるんじゃないかな~…ほら、丁度良い所に」
ミルドレットが指さした方向にはゲームに出て来そうなゴッツい、けど、出すところはしっかり出したちょいエロな鎧を着た女の子たちに囲まれた上半身裸の男が連れられてきた。男はヒドく怯えているようだ。
「何が始まるんだ?」

「よく見ておくと良いよ、ケン。この広場はボクたち番犬の訓練場でもあるけれど、処刑場でもあるんだ…見せしめとしては最高の場所だからね」

「処刑?!」
処刑という言葉を聞いて、グロテスクな場面を想像した。
が、鎧美女達は何か呪文を唱えると男の首輪が外れただけだった。
「た、頼む!助けてくれ!!」
男は泣いて鎧美女の脚に縋っていた。

うわー、大の男が情けない。女に捨てられたからってあんなに泣いちゃって…。

「何もあんなに泣かなくてもな~?」
ミルドレットは何も答えない。それどころか、とても暗い面持ちで男を見ていた。

突然、フゥーッと空から何か冷たい空気が流れ込んできた。
「なんだ?」
見上げると、さっきまで雲だった者が人の形になりフワリフワリと男の元に近付いてくるのだ。
男は頭を抱え「死神がきた!もう終わりだ…」そう言い、全身の力を抜いてダラリと地面に崩れてしまった。
男に「死神」と言われた「何か」は男の元にたどり着くころには女性の形に姿を変えて、男をその胸に包み込むと優しく口づけをした。すると、男は激しく痙攣して見る見るうちに体が灰へと変わってしまった。

「何か」は美味しかったと言わんばかりに唇を人舐めすると、またフワリフワリと元の雲に戻ってしまった。

それは一瞬の出来事で、俺は一部始終をただ呆けて見ているだけだった。

「…ン……ケン!!」
ミルドレットに肩を揺さぶられ、ハッとして我に返る。
「今の、何だったんだ?」
「説明はあとで、ピース達がくるよ。逆らわないように、僕の後ろにいるんだよ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~

骨折さん
ファンタジー
 なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。  どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。  そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。  世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。 「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」  来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。  このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?  壁だぜ!? 無理なんじゃない!?  これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である! ※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。 ※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

アリスと白薔薇の時計塔

椿灯夏
ファンタジー
世界で一番美しい時計塔のあるルクス国。 しかし……その時計塔は、今まで一度も動いたことはない。 いつしか時計塔はこう呼ばれるようになった。 「沈黙の時計塔」とーー そして少しずつ運命は廻りだす。 これはアリスと呼ばれる少女と彼女のために騎士になった少年の物語。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

世界に疑問を持った女王さまのお話

れぐまき
ファンタジー
ここは不思議の国 違う世界からやってくる〝アリス〟はこの世界の特別 〝アリス〟は全てに愛される それが常識 ・・・本当にそうだろうか? 世界の常識に疑問を持った女王さまのお話 個人サイトの拍手お礼で連載してた小説を加筆修正しながら気まぐれ更新

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...