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9.神官

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「それは大丈夫です! 実際には別の人に神官の仕事をしてもらいますから! ヘレンとコーリーとマギーにも、新しい神官を手伝ってあげるよう頼んでおきました!」

「え?」

 ヴィンセントはきょとんとして私を見る。

 私ははじめから神官として働くつもりなどなかった。ただ、テレンスみたいな犯罪者を神官の座に留めて置くのが危ないと思っただけだ。

 テレンスに神官を辞めさせたら、はじめから別の人に仕事を任せる予定だった。

 私はグレース時代に処刑されたことで神殿にも王都にもうんざりしているので、再びここで働くなんてごめんなのだ。

 それなのになぜ神官の役割を奪うような真似をしたかと言うと、単純に幼女に立場を奪われるなんていうひどい屈辱を受けるテレンスの顔が見たかったから。

 つまり、ただの嫌がらせだ。


「ええと、つまりシャーロットが神官になるのは名前だけってことかい?」

「はい。シャーリーは神官になるよりも、ヴィンセント様のおうちで一緒に暮らしたいですもの!」

 私がそう言って腕に擦りつくと、ヴィンセントの表情が途端に明るくなった。

「そうか、それなら問題はないな! 本当に神官の仕事をするのかと思って驚いてしまったよ。名誉神官みたいなものかな? うん、シャーリーにふさわしい肩書きだ」

 親バカなヴィンセントはそう言って一人でうんうんうなずいている。

 そして笑顔でテレンスのほうを見た。

「わかりました。神官様がそこまでおっしゃるなら、シャーリーを神官にしていただいて構いません」

「は、はい……。ありがとうございます……」

 テレンスは顔を引きつらせて、ヴィンセントにお礼を言う。その顔には、なんであっさり了承してるんだよという不満がありありと現れていた。


「それにしてもシャーリーはすごいなぁ。シスター見習いに行ったら、神官様になってしまうんだもんな」

 ヴィンセントはにこにこしながら私の頭を撫でる。

「えへへ」

「家に戻ったらお祝いしようね。ああ、今日は久しぶりにシャーリーと家に帰れるから楽しみだ」

 ヴィンセントはでれでれ顔でそう言った。私は明るい声で喜んで見せる。

 テレンスはヴィンセントに甘える私を、おぞましいものでも見るかのような目で眺めていた。
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