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8.交渉

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 無事テレンスの奴隷売買リストを見つけた私は、それを魔法で複製すると、三人と一緒に見習い部屋に戻って来た。

「シャーロットは紙を複製する魔法まで使えるのね」

 見習い部屋のベッドの上に座ったヘレンは、複製された書類を見て感心したように言う。

「まぁね! 私にできないことなんてないわ」

 私が得意になって言うと、マギーが興味深げに尋ねてくる。

「ねぇ、シャーロット。このリストどうするの? 役人のところに持って行くの?」

「これだけはっきりした証拠があればきっと信じてもらえるわね!」

 マギーの横から、コーリーもはしゃいだ声で言う。

 しかし、私は首を横に振った。

「そうね、最初はそうしようと思ってたんだけど……。もうちょっと別のことに使おうかと思うの」

「別のこと?」

 三人は一斉に首を傾げる。私はにっこり笑って告げた。

「神官様が奴隷売買に手を染めていたなんて、許され難い罪よね?」

「ええ、もちろん」

「とんでもない罪よ!」

「そうよね、これが知られたら神官様は当然神官を辞めさせられるわ。それどころか処刑だってあり得るかも」

 私が真面目な顔で言うと、三人はこくこくうなずいた。


「そうね。グレース様はそれで処刑されたんだから、神官様もそうなってもおかしくない」

「というか、そうじゃなきゃ不公平だわ!」

「グレース様のときだってみんなあっさり手の平を返して処刑に賛成したんだから、神官様の場合だってきっとそうなるはずよ」

 三人は勢い込んで言う。私は三人の顔をぐるりと眺めて言った。


「そうよね! だから私、取引をしようと思うの」

「取引?」

「ええ、取引」

 私はそう言いながら、ヘレンの手元からリストの複製を抜き取る。

「神官様も、知らないうちに追い込まれて絶望する気持ちを味わえばいいのよ」

 ご機嫌でそう言ったら、三人は目をぱちくりする。

 私はきょとんとしたままの三人に向かって、にっこり微笑んだ。
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