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6.シスター見習い
⑦
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本当は見習いの仕事をするときは、魔法は使わないつもりだったのだ。
極力何の力のない子供を装って、テレンスを油断させながら弱みを探る予定だった。けれどこの子たちの純粋さを見ていたら、ちょっと何とかしてあげたくなってしまったのだ。
「ありがとう、シャーロット。私のせいで、またみんな怒られると……」
コーリーは目に涙を溜めてお礼を言ってきた。私はまたちょっと得意になった。
その後は、もう私が魔法を使えることはバレてしまったので、自由に魔法を使うことにした。
掃除も、料理の下準備も、皿洗いも、全て魔法を駆使してあっという間に終わらせた。
女の子たちは私が魔法を使うたびにすごいすごいと目を輝かせる。
「シャーロットってすごいのね! 大人でもこんなにたくさんの魔法を使える人見たことないわ!」
ヘレンは感心しきった顔で言う。
「まぁね。私にかかればこれくらいわけないわ」
「本当にすごい! 仕事がこんなに早く終わったの、はじめてよ!」
ヘレンはそう言って嬉しそうに笑う。コーリーとマギーもすっかりはしゃいでいる様子だった。
「今日の分の仕事が終わったから、休んでも大丈夫ね。ああ、こんなに早くから休めるなんて初めて!」
「いつも真夜中になるまで眠れないものね。朝は日が昇る前に起きなくちゃならないのに」
「ねぇ、休憩室でお茶会しましょうよ! シャーロットにお礼がしたいわ」
三人はきゃっきゃと話している。それから先ほどの地下の休憩室まで戻った。
地下の狭い休憩室で、古びたテーブルの前に座りお茶を飲む。
お茶は随分薄く、ほぼお湯のようだった。古い茶葉を使っているのか、匂いもほとんどない。
お茶菓子も出してくれたけれど、随分固くて味が薄かった。クッキーだと言っていたけれど、軍人が食べる保存食と言ったほうが近い気がする。
それでも三人は楽しそうだった。
あちこち欠けたカップで味の薄い紅茶を飲みながら、頬を上気させて話している。
彼女たちにはこんな風にゆっくりお茶をして話すことができる機会なんて、ほとんどないのかもしれない。
極力何の力のない子供を装って、テレンスを油断させながら弱みを探る予定だった。けれどこの子たちの純粋さを見ていたら、ちょっと何とかしてあげたくなってしまったのだ。
「ありがとう、シャーロット。私のせいで、またみんな怒られると……」
コーリーは目に涙を溜めてお礼を言ってきた。私はまたちょっと得意になった。
その後は、もう私が魔法を使えることはバレてしまったので、自由に魔法を使うことにした。
掃除も、料理の下準備も、皿洗いも、全て魔法を駆使してあっという間に終わらせた。
女の子たちは私が魔法を使うたびにすごいすごいと目を輝かせる。
「シャーロットってすごいのね! 大人でもこんなにたくさんの魔法を使える人見たことないわ!」
ヘレンは感心しきった顔で言う。
「まぁね。私にかかればこれくらいわけないわ」
「本当にすごい! 仕事がこんなに早く終わったの、はじめてよ!」
ヘレンはそう言って嬉しそうに笑う。コーリーとマギーもすっかりはしゃいでいる様子だった。
「今日の分の仕事が終わったから、休んでも大丈夫ね。ああ、こんなに早くから休めるなんて初めて!」
「いつも真夜中になるまで眠れないものね。朝は日が昇る前に起きなくちゃならないのに」
「ねぇ、休憩室でお茶会しましょうよ! シャーロットにお礼がしたいわ」
三人はきゃっきゃと話している。それから先ほどの地下の休憩室まで戻った。
地下の狭い休憩室で、古びたテーブルの前に座りお茶を飲む。
お茶は随分薄く、ほぼお湯のようだった。古い茶葉を使っているのか、匂いもほとんどない。
お茶菓子も出してくれたけれど、随分固くて味が薄かった。クッキーだと言っていたけれど、軍人が食べる保存食と言ったほうが近い気がする。
それでも三人は楽しそうだった。
あちこち欠けたカップで味の薄い紅茶を飲みながら、頬を上気させて話している。
彼女たちにはこんな風にゆっくりお茶をして話すことができる機会なんて、ほとんどないのかもしれない。
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