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3.魔法大会
④
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「ヴィンセント様、私、うまくできなかったですね……」
「うーん、ちょっと出る大会のレベルを間違えてしまったみたいだね。私も調査不足だった。もう午後のテストは棄権して帰ろうか」
ヴィンセントは私を抱き上げ、慰めるように言う。
「いえ! シャーリーは最後まで挑戦したいです!」
「シャーリー! なんて立派なんだ! けれど、午後のテストは試合形式だろ? あんなレベルの高い子供たちに混じって試合なんかしたら、シャーリーがけがをしてしまうかもしれない」
ヴィンセントは私の目を見つめながら眉根を寄せた。
「大丈夫です! 修道士様たちも見てくれていますもの!」
「うーん、しかしだな……」
「シャーリーは最後までやり遂げたいんです!」
私が真剣な顔で頼むと、ヴィンセントは考え込んだ後、渋々と言った様子でうなずいてくれた。
「わかったよ、シャーリー。けれど、絶対に無理してはいけないよ」
「はい、無理せず頑張ります!」
私は元気な声で言った。
その後はお庭に出て、ヴィンセントが持ってきてくれたサンドイッチを二人で食べた。ヴィンセントは昼食時まで私を膝の上に抱えたままなので、若干周りの視線が痛い。
その上、タイミング悪く私たちのそばをあの生意気な金髪の子供が通りかかり、思いきり馬鹿にした目に見られてしまった。
昼食が終わると、名残惜しそうにするヴィンセントに別れを告げて会場までの道を急ぐ。
すると、マイラに引き止められた。
「シャーリーちゃん!」
「あっ、マイラお姉さん……」
「見てたわよ。残念だったわね。あんなにテストを受けて、一つも成功できないなんて……」
マイラは悲しげな声で言った。なんともしらじらしい。
「本当に私ってだめね……」
「ヴィンセント様もがっかりしてしまったかもしれないわね……。でも逃げるのはだめよ、シャーリーちゃん。一度参加すると決めたのだから最後までやりきらないと」
「ええ、最後のテストまで頑張るわ」
私が答えると、マイラは満足げに笑った。
それから午後のテストが始まった。
ここからは試合形式になり、参加者同士で向かい合って相手を攻撃する形になる。
攻撃と言っても、当然神殿で子供たちにけがさせるような試合をさせるわけがないので、参加者はみんな防御魔法の付与された腕輪をつける。
これは攻撃を受けても三回までなら身を守ってくれるという代物だ。
三回攻撃を受け、バリアが破られた者から敗退となる。最後まで勝ち上がった者が優勝者になるのだ。
「うーん、ちょっと出る大会のレベルを間違えてしまったみたいだね。私も調査不足だった。もう午後のテストは棄権して帰ろうか」
ヴィンセントは私を抱き上げ、慰めるように言う。
「いえ! シャーリーは最後まで挑戦したいです!」
「シャーリー! なんて立派なんだ! けれど、午後のテストは試合形式だろ? あんなレベルの高い子供たちに混じって試合なんかしたら、シャーリーがけがをしてしまうかもしれない」
ヴィンセントは私の目を見つめながら眉根を寄せた。
「大丈夫です! 修道士様たちも見てくれていますもの!」
「うーん、しかしだな……」
「シャーリーは最後までやり遂げたいんです!」
私が真剣な顔で頼むと、ヴィンセントは考え込んだ後、渋々と言った様子でうなずいてくれた。
「わかったよ、シャーリー。けれど、絶対に無理してはいけないよ」
「はい、無理せず頑張ります!」
私は元気な声で言った。
その後はお庭に出て、ヴィンセントが持ってきてくれたサンドイッチを二人で食べた。ヴィンセントは昼食時まで私を膝の上に抱えたままなので、若干周りの視線が痛い。
その上、タイミング悪く私たちのそばをあの生意気な金髪の子供が通りかかり、思いきり馬鹿にした目に見られてしまった。
昼食が終わると、名残惜しそうにするヴィンセントに別れを告げて会場までの道を急ぐ。
すると、マイラに引き止められた。
「シャーリーちゃん!」
「あっ、マイラお姉さん……」
「見てたわよ。残念だったわね。あんなにテストを受けて、一つも成功できないなんて……」
マイラは悲しげな声で言った。なんともしらじらしい。
「本当に私ってだめね……」
「ヴィンセント様もがっかりしてしまったかもしれないわね……。でも逃げるのはだめよ、シャーリーちゃん。一度参加すると決めたのだから最後までやりきらないと」
「ええ、最後のテストまで頑張るわ」
私が答えると、マイラは満足げに笑った。
それから午後のテストが始まった。
ここからは試合形式になり、参加者同士で向かい合って相手を攻撃する形になる。
攻撃と言っても、当然神殿で子供たちにけがさせるような試合をさせるわけがないので、参加者はみんな防御魔法の付与された腕輪をつける。
これは攻撃を受けても三回までなら身を守ってくれるという代物だ。
三回攻撃を受け、バリアが破られた者から敗退となる。最後まで勝ち上がった者が優勝者になるのだ。
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