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2.裁きの家

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 どうせいくら怖がろうと、お屋敷からは出られないのだ。それなら、起こったことはちゃんと確認しておくべきだろう。

 そろりそろりと近づいて、蛇にでも触るような気持ちでその本を手に取る。

(鍵がかかってる)

 勇気を出して手に取ったのに、その本には頑丈そうな鍵がかかっていた。タイトルのようなものも書いておらず、ただ赤い表紙に金色の模様が描いてあるだけだ。

 本というより、日記のようにも見える。

 中身が気になって仕方なく、無理に引っ張ってみるが、びくともしなかった。強く引っ張ると、バチンと指を電流が走る。どうやら物理的な鍵だけでなく、魔法までかかっているらしい。中を読むのは諦めるしかないようだ。

 日記らしきものを、本棚の開いているスペースに戻す。持って行くべきかとも迷ったが、やはり気味が悪いので、書庫に置いておくことにした。

 精神的にすっかり疲れ切ってしまったが、まだ二階の探索が残っている。

 自分を奮い立たせるように、階段を上がった。


 二階には全部で八つの部屋があった。

 回っている途中もなんだかぞくぞく寒気がして、もうやめにしてしまいたいと何度か思ったが、部屋を全て見ていない状態で夜を迎えるのはそれこそ恐ろしく、気力を振り絞って全ての部屋を確認した。

 二階の部屋はどれも同じような造りで、それぞれにベッドや机があり、人が住めるようになっていた。その上それぞれの部屋に、小さいながらシャワールームがついている。

 部屋は好きなところを使えと言われたが、確かにどの部屋でも生活できそうだ。

 いくつかの部屋にはトランクや小物などが置きっぱなしになっており、以前人が生活していた気配を感じさせて気味が悪かった。

 そのうち一部屋は人の生活していた形跡もなく、誰かが掃除してくれたのかほかの部屋に比べて綺麗で、過ごしやすそうだった。ここを部屋にしようかと思い、トランクを床に置く。

 すると、机の上に白い封筒が置いてあるのを見つけた。また説明の手紙かしらと思いながら、封を切る。

 中を見て思わず声にならない悲鳴を上げた。


『私はお前たちを絶対に許さない』


 赤黒いぐちゃぐちゃの字で、確かにそう書いてある。まさか、これ、血文字なんじゃ……。そう考えた途端力が抜け、手紙がするりと床に落ちた。

 屋敷に入ってから違和感は何度も抱いたものの、それはただの感覚でしかなかった。それが、はっきり悪意だとわかる形で目の前に映し出されてしまった。


 ……考えないようにしていた。二十年前ここで死んだ魔女。

 彼女は自分を閉じ込めて殺した人々を憎んでいるのかもしれない。裁きの家なんて呼んで罪人を送り付けてくる者たちのことも。

 私は決して足を踏み入れてはならない場所にやって来てしまったのかも。

 恐怖で手紙を放ったまま、私は廊下に飛びだした。
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