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2.楽園のような場所

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「ラウロ様。まだ育っていない芽などはありますか?」

「向こうに双葉が生えたばかりの花があるが……」

「ぜひ見せてください」

 そう言うと、ラウロ様は私を温室の端の方に連れて行ってくれた。そこには黒い地面の間にぽつぽつといくつかの双葉が生えていた。

 私は両手を前に出して魔法をかける。すると、土の上に少しだけ顔を出していた双葉はみるみる成長し、あっという間に茎が伸びて葉が生え、美しい花を咲かせた。

 ほかにも、枯れた植物を蘇らせたり、痩せた果実を丸々と太らせたりと、いままでひそかに練習してきた魔法を思う存分使ってみせる。

 最初はおもしろそうに私が魔法を使うのを見ていたラウロ様は、最後にはぽかんとした顔をしていた。

 さすがに調子に乗り過ぎたかと反省する私に、ラウロ様は勢い込んで言う。


「なんだ今のは! これのどこが『光魔法としては中途半端な能力』なんだ!? こんな魔法初めて見たぞ!?」

「いえ、そんな。植物にしか効かない使い道の少ない魔法ですから」

「そんなわけはないだろ!? 農業でも植物学でも何でも、いくらでも活用できるじゃないか! 君はカフェテリアで元婚約者の話をした時、彼の家には自分の中途半端な能力を認めてくれた恩があると言っていたが、そんな素晴らしい能力どこでも欲しがると思うぞ……!?」

「そんな、お世辞はやめてくださいませ」

 私が赤くなって両手を振ると、ラウロ様は納得のいかなそうな顔をする。

 それから私が成長させた花に手をあててじっと眺めながら、「一体どういう原理なんだ?」とか、「こんなすごい力なのにな」とひとり言のように呟いていた。私はなんだか落ち着かなくてそわそわしてしまう。


「……あの、ラウロ様、少しよろしいですか? もう一度お花を見せていただいても」

「ああ、どうした?」

 ラウロ様がどいてくれたので、私は再び花壇の前にしゃがみ込む。そして成長させた花に手をかざした。

 もう一度、今度は先ほどとは反対の魔法をかける。途端に花はしゅるしゅると縮み、元の双葉に戻っていった。


「今のは……」

「魔法で急成長させることも出来ますけれど、ちょっと邪道かなと思っていて。少しずつ元気になる魔法をかけながら、普通の速度で育てるのが一番だと思っているんです。一旦元に戻させてもらいました」

 そう言いながら、花を一つ一つ元の芽に戻していく。

 戻し終わった後ラウロ様を見ると、放心したような顔をしていた。

「君はそんなことまで出来るのか……」

 ラウロ様は随分驚いている様子だった。

 こんな中途半端な魔法でここまで驚いてくれるなんて、やっぱりラウロ様は良い方だなぁと改めて感心してしまった。
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