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6.王宮への招待
②
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「ねぇ、サイラス」
「なんでしょうか、お嬢様」
「サイラスが一緒に来てくれない?」
「え?」
サイラスはぽかんとした顔でこちらを見る。私はもう一度繰り返す。
「サイラスがエスコート役をしてちょうだい! それならきっと私、パーティーでも楽しく過ごせるわ」
あんまりいい案を思いついたので、嬉しくなってしまった。
そうだ、薄情な身内や知り合いの貴族に頼む必要なんてないのだ。それに、サイラスと一緒のほうがずっと楽しいと思う。
「い、いえ、私などがエスコート役ではお嬢様に恥をかかせてしまいます。何とかクリス様かディラン様を説得してきますので……」
「お兄様たちについて来てもらうよりも私、サイラスと一緒がいい! ね、いいでしょう? 服はもちろん私が用意するから。この前レストランに行った時もサイラスはちっとも違和感がなかったわ」
「いえ、やはり、もっとほかに……」
おろおろしているサイラスに一緒に来て欲しいと頼み込む。サイラスは散々迷った顔をしていたけれど、「嫌なの?」と悲しげな顔で尋ねたら、ついには折れて了承してくれた。
「ありがとう、サイラス! なんだか楽しみになって来たわ」
会場ではどうせカミリアに嫌味を言われたり、ジャレッド王子に睨まれたりするんだろうけれど、サイラスが来てくれると思うと途端に心が浮き立ってくる。
いいわ。どうせ招待から逃れられないなら、楽しんでやるから。
サイラスはすっかり機嫌がよくなった私を、何とも言えない顔で見つめていた。
***
そしてパーティー当日。私はサイラスを連れて馬車に乗り込んだ。
サイラスには、今回は銀の糸で刺繍されたネイビーのジャケットに、黒のトラウザーズ、ロイヤルブルーのコートをプレゼントした。
服を見たサイラスは目を見開いて値段を気にしていたけれど、王宮のパーティーなんだからこれくらいでなくてはいけないわと言うと、戸惑いつつも納得していた。
本当はサイラスにあげる服を選んでいるうちに、あれもいいこれもいいと悩んでいたら、テンションが上がって予定以上に高価になっちゃったんだけど。
それを言ったら受け取ってくれなくなるから言わないでおこう。
馬車を降りて王宮に入り、長い廊下を会場まで歩く。
以前レストランに行ったときと同じく、今回もご令嬢たちはちらちらとサイラスを眺めては頬を赤らめていた。私はそれをちょっと得意に思いつつ、サイラスの腕に自分の腕を回す。
「あ、あの、お嬢様」
「さぁ、行きましょう。早くしないと始まっちゃうわ」
そう言って急かすと、サイラスは何か言いたげにしつつも頷いた。
周りの人たちの視線を浴びながら、パーティー会場に足を踏み入れる。
天井にかかったいくつものシャンデリアに、それを反射して輝く大理石の床。美しく着飾ったご令嬢と、彼女達の横に立つ宮廷服の紳士たち。久しぶりに見る王宮は相変わらず華やかだ。
会場に入ると、すぐに何人かの貴族が話しかけてきた。腫れ物扱いされることを覚悟していたけれど、大抵の人はにこやかに接してくれる。
けれど、中にはやはり蔑みの表情を浮かべてこちらを見たり、もっとあからさまに嫌味を言ってくる人もいた。
それは仕方ないことだと思う。私は最高峰の権力者を敵に回してしまったのだから。
私はそう諦めていたけれど、サイラスは私が冷たい視線を向けられる度に必死でフォローしてくれた。
そんな様子を見ていたら、嫌味を言われたことよりも、幸せな気持ちのほうが大きくなる。
それで途中でつい笑ってしまい、意地悪な顔をして声をかけてきた侯爵家のご令息に怪訝な顔をされてしまった。
「なんでしょうか、お嬢様」
「サイラスが一緒に来てくれない?」
「え?」
サイラスはぽかんとした顔でこちらを見る。私はもう一度繰り返す。
「サイラスがエスコート役をしてちょうだい! それならきっと私、パーティーでも楽しく過ごせるわ」
あんまりいい案を思いついたので、嬉しくなってしまった。
そうだ、薄情な身内や知り合いの貴族に頼む必要なんてないのだ。それに、サイラスと一緒のほうがずっと楽しいと思う。
「い、いえ、私などがエスコート役ではお嬢様に恥をかかせてしまいます。何とかクリス様かディラン様を説得してきますので……」
「お兄様たちについて来てもらうよりも私、サイラスと一緒がいい! ね、いいでしょう? 服はもちろん私が用意するから。この前レストランに行った時もサイラスはちっとも違和感がなかったわ」
「いえ、やはり、もっとほかに……」
おろおろしているサイラスに一緒に来て欲しいと頼み込む。サイラスは散々迷った顔をしていたけれど、「嫌なの?」と悲しげな顔で尋ねたら、ついには折れて了承してくれた。
「ありがとう、サイラス! なんだか楽しみになって来たわ」
会場ではどうせカミリアに嫌味を言われたり、ジャレッド王子に睨まれたりするんだろうけれど、サイラスが来てくれると思うと途端に心が浮き立ってくる。
いいわ。どうせ招待から逃れられないなら、楽しんでやるから。
サイラスはすっかり機嫌がよくなった私を、何とも言えない顔で見つめていた。
***
そしてパーティー当日。私はサイラスを連れて馬車に乗り込んだ。
サイラスには、今回は銀の糸で刺繍されたネイビーのジャケットに、黒のトラウザーズ、ロイヤルブルーのコートをプレゼントした。
服を見たサイラスは目を見開いて値段を気にしていたけれど、王宮のパーティーなんだからこれくらいでなくてはいけないわと言うと、戸惑いつつも納得していた。
本当はサイラスにあげる服を選んでいるうちに、あれもいいこれもいいと悩んでいたら、テンションが上がって予定以上に高価になっちゃったんだけど。
それを言ったら受け取ってくれなくなるから言わないでおこう。
馬車を降りて王宮に入り、長い廊下を会場まで歩く。
以前レストランに行ったときと同じく、今回もご令嬢たちはちらちらとサイラスを眺めては頬を赤らめていた。私はそれをちょっと得意に思いつつ、サイラスの腕に自分の腕を回す。
「あ、あの、お嬢様」
「さぁ、行きましょう。早くしないと始まっちゃうわ」
そう言って急かすと、サイラスは何か言いたげにしつつも頷いた。
周りの人たちの視線を浴びながら、パーティー会場に足を踏み入れる。
天井にかかったいくつものシャンデリアに、それを反射して輝く大理石の床。美しく着飾ったご令嬢と、彼女達の横に立つ宮廷服の紳士たち。久しぶりに見る王宮は相変わらず華やかだ。
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けれど、中にはやはり蔑みの表情を浮かべてこちらを見たり、もっとあからさまに嫌味を言ってくる人もいた。
それは仕方ないことだと思う。私は最高峰の権力者を敵に回してしまったのだから。
私はそう諦めていたけれど、サイラスは私が冷たい視線を向けられる度に必死でフォローしてくれた。
そんな様子を見ていたら、嫌味を言われたことよりも、幸せな気持ちのほうが大きくなる。
それで途中でつい笑ってしまい、意地悪な顔をして声をかけてきた侯爵家のご令息に怪訝な顔をされてしまった。
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