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ー第36話ー
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「え・・・」
あれほどに待ちわびた、15歳の誕生日。
ウララはその日、しばらく起き上がることができなかった。
頭部に感じる違和感。耳の少し上あたり、自分の手は確かにある筈のないものに触れていた。
表面は少しざらついており、湾曲しながら上へと向かって伸びている。先に行くほど細くなり、先端は少し丸みを帯びて尖っていた。
「う…そ…嘘よ・・・」
震える手を伸ばして手鏡を取る。真実が見えてしまうことに恐怖し思わず固く目をつぶった。
ゆっくりと、目を開く。
「イヤァァァッァ!」
ガシャァァァアン!!
自分の姿が映った鏡を見た瞬間、思わずウララは手鏡を投げ捨てた!大きな音を立てて砕け散る!
「ウララ!どうし・・ヒッ!」
音を聞きつけ部屋へ走りこんだ母だったが、扉を開けた刹那飛び込んだ我が娘の姿に思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
髪は紅く燃えるような色へと変わっていた。爪は獣のように少し尖っていた。
そして頭部には、上へと伸びる二本の角。
母が向けたウララを見る目は、魔物を見る目と同じだった。
「お・・おか‥お母さん・・・・」
嗚咽でうまく言葉が出ない。動揺し見開かれた目と瞳孔。流れる涙がベッドへしずくを落とした。
「う、ウララ?ウララなのよね!?」
ここで我に返った母はウララへと近づいた。我が子に生えた角に恐る恐る触れる。外からくっつけてたわけじゃない。紛れもなくそれは頭から生えたウララの角である。
「うっ・ぐぅっ!えぅっ!おがあざんっ・・」
気が動転しパニックに陥ったウララを母はギュッと抱きしめた。肩に触れる角の堅い感触。母はぎりっと歯を噛み締める。
「どうして・・・こんなことばっかりっっ!何をしたっていうのよ・・私たちがっ!何をしたって・・・っ!!」
誰に言うでもなく、声をかみ殺して唸るように呟いた母の言葉には明らかな怒りの感情がにじみ出ていた。
すぐさま母は少しだけ空いたカーテンの隙間を完全に閉めきり、ウララに諭すように言う。
「いい、この部屋から良いというまで出てはいけません。お母さんはウララを治す方法を探してきます。だからいい子にして待ってるのよ」
声には出さず、こくんと頷くウララ。母はとても辛そうな顔で立ち上がると、ウララを残し部屋を後にした。
バタン
戸が閉まる。光の遮られたこの部屋でウララは声を殺して泣いた。
(夢なら醒めて!夢なら早く醒めてよ!)
布団を頭までかぶり、何度も何度も心の中でそう叫んだ。そのたび枕に沈む角の感触が、これが現実であることを残酷にも知らしめ続けるのである。
あれほどに待ちわびた、15歳の誕生日。
ウララはその日、しばらく起き上がることができなかった。
頭部に感じる違和感。耳の少し上あたり、自分の手は確かにある筈のないものに触れていた。
表面は少しざらついており、湾曲しながら上へと向かって伸びている。先に行くほど細くなり、先端は少し丸みを帯びて尖っていた。
「う…そ…嘘よ・・・」
震える手を伸ばして手鏡を取る。真実が見えてしまうことに恐怖し思わず固く目をつぶった。
ゆっくりと、目を開く。
「イヤァァァッァ!」
ガシャァァァアン!!
自分の姿が映った鏡を見た瞬間、思わずウララは手鏡を投げ捨てた!大きな音を立てて砕け散る!
「ウララ!どうし・・ヒッ!」
音を聞きつけ部屋へ走りこんだ母だったが、扉を開けた刹那飛び込んだ我が娘の姿に思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
髪は紅く燃えるような色へと変わっていた。爪は獣のように少し尖っていた。
そして頭部には、上へと伸びる二本の角。
母が向けたウララを見る目は、魔物を見る目と同じだった。
「お・・おか‥お母さん・・・・」
嗚咽でうまく言葉が出ない。動揺し見開かれた目と瞳孔。流れる涙がベッドへしずくを落とした。
「う、ウララ?ウララなのよね!?」
ここで我に返った母はウララへと近づいた。我が子に生えた角に恐る恐る触れる。外からくっつけてたわけじゃない。紛れもなくそれは頭から生えたウララの角である。
「うっ・ぐぅっ!えぅっ!おがあざんっ・・」
気が動転しパニックに陥ったウララを母はギュッと抱きしめた。肩に触れる角の堅い感触。母はぎりっと歯を噛み締める。
「どうして・・・こんなことばっかりっっ!何をしたっていうのよ・・私たちがっ!何をしたって・・・っ!!」
誰に言うでもなく、声をかみ殺して唸るように呟いた母の言葉には明らかな怒りの感情がにじみ出ていた。
すぐさま母は少しだけ空いたカーテンの隙間を完全に閉めきり、ウララに諭すように言う。
「いい、この部屋から良いというまで出てはいけません。お母さんはウララを治す方法を探してきます。だからいい子にして待ってるのよ」
声には出さず、こくんと頷くウララ。母はとても辛そうな顔で立ち上がると、ウララを残し部屋を後にした。
バタン
戸が閉まる。光の遮られたこの部屋でウララは声を殺して泣いた。
(夢なら醒めて!夢なら早く醒めてよ!)
布団を頭までかぶり、何度も何度も心の中でそう叫んだ。そのたび枕に沈む角の感触が、これが現実であることを残酷にも知らしめ続けるのである。
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