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ー第29話ー

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「こっちだ、この道を行ったぞ!!」



メタルフラッグから逃れるカインの影を追い、追跡者達はカインの姿が消えた路地を走る。



細く伸びる道は一本、分かれ道もない路地をいく追跡者だったが、角を曲がったところでその足を止めた。




「行き止まり・・・・だと」




大通りから入るその小道はL字になっており、袋小路。だが逃げ込んだはずのカインの姿はどこにも見あたらい。




「おい、本当に見たのかお前!」



「はい、間違いありません。通達によると対象は鍵師でありながら暗殺者並の身のこなしができるといいます。壁を伝って屋根から逃げたんでしょう」




「ちぃ!手間かけさせやがって!おい、身軽なやつに上から探させろ!俺達は通りを潰す!」





煙に巻かれたことを察した追跡者達はUターンして元の道を戻る。







「上手くいったみたいだな」






まさか目の前にターゲットのカインがいるとは思いもせずに。




<とっさに空間施錠で空間内の景色と音を施錠、中に入ることで姿を隠す。考えたね、十分戦闘で活用できそうだ>




「まだ大きさと形は不慣れだから、なんともいえないけどな。それより面倒なことになった・・・」




カインの口からため息が漏れる。



「さすがこの街一番の勢力を持つ組だけあって包囲網がハンパじゃない。すでに俺の顔は街中に知れ渡っているだろうよ。一般人にまぎれた潜伏アンチジョブも噂を混ぜ込んで、カタギですら顔が割れる。この街に居続けるのは不可能だ」




そう話す間にも、カインの頭上では屋根を飛び越えどこかへ走り去っていくメタルフラッグのメンバーが見えた。姿が見えていないとはいえ、この場から動かないわけにも行かない。




「なぁジル、最初に拠点に繋いだあの鍵みたいに、前の鍵師が遺した空間接続術式の鍵ってほかにないのか?離れた村とか外国とか」




<うーん、残念ながら無いね。正確にはあったけどもう無い、だけど>



<前にも言ったけど空間接続をする際には所有者の承諾が必要で、あくまで所有者と当初契約した鍵師との間に生まれた承諾に過ぎない。5代目に受け継がれた今、その契約のほとんどは破棄されてただの空の鍵に変わってしまったんだよ。今使えるのは扉の所有者が先代鍵師だった鍵だけ。そのうち回収済みなのは拠点につながる鍵だけだ>



「そっかぁ、名案だと思ったんだけどなぁ・・・」




仕方ない、とカインは後ろの三つ編みを束ねていた髪ゴムを取り上着をその場に捨てた。



「気休め程度だけど見た目は多少ごまかせるはずだ。このままこの街を出てしばらく潜伏できる場所を探そう。拠点に篭っていたら餓死してしまうし、どこかしら自由に行き来できる場所がないとね。状況の打開策はその後ゆっくり練ろうじゃないか」




カインは施錠を解いて、いまや敵地となった街の中へ潜り込んだ。


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