20 / 50
ー第19話ー
しおりを挟む
ぶぉん!!
風を切って放たれた回し蹴りは確実にカインの後頭部に狙いを定めていた。だが不意を付いたつもりでいたのはこの場でマルスだけである。
「!?」
渾身の回し蹴りは、なんと後ろを向いたままのカインの腕によって糸も簡単に止められてしまった。
「何もしなきゃ手を出すつもりは無かったんだけどな。先に言っておくと俺は謝るつもりは無い。お前が悪いんだぜ?」
そういうとカインはマルスの足首をむんずとつかむと・・・
「おぉ・・?ぉお!おおおおおおおおおおお!!」
マルスの体が宙へ浮いた!カインよりも一回り大きいその体は簡単に浮き上がり、ブンと片腕一本で振り回されすっ飛んでいく!
ゴッシャアァァァァァァァ!!!!
マルスの体は空の木の樽の山へ派手に突っ込んだ。バラバラになった樽の瓦礫の山からはみ出た両足はピクリとも動く気配が無い。
「おわっ!そんなに吹っ飛ばすつもりは無かったんだが・・・やっちまったか?」
<さすがにあれ位じゃ死なないさ。曲がりなりにも『戦士』なんだろ、彼。カインももうちょっと自分の体の変化に慣れておいたほうがいいね>
そんな二人の戦闘を目の当たりにしたソリッズとその他は、その場に立ち尽くし動けずにいた。
目の前で起こったことに対し脳の処理が追いつかないのだ。カインの変わりように始まり、今までいじめ続けてきた相手に拳が当たらない。あろうことかあのマルスでさえ腕一本で宙に浮き数mも吹っ飛ばされたのだ!
しかもジョブランク最低のE、生産職の鍵師に戦士が、だ。
情報量が多すぎて混乱する一行に対し、カインは彼らに向き直る。
「いいか、よく聞け。この通り俺は変わった。お前たちが死ぬほどボコボコにしたせいで文字通り死んで生まれ変わった。今の俺ならお前らを俺が受けたように、同じ仕打ちをすることなんて容易い。だけど俺はそうしない。大サービスだ。あれだけ散々蹴られ殴られなじられ続けたそのすべてを忘れてやる。今の俺にとってお前たちなんてそんなもんだ。心底どうでもいいんだ」
「だけどそれでも突っかかってくるって言うんなら仕方が無いから相手をしてやる。まぁたぶんあぁなると思うぜ?」
そういってカインが指差す先には相変わらず動く気配の無いマルスの体。
「くっ・・・貴様!覚悟はできているんだろうな?『役人』の俺に楯突いたことを!貴様の家から何もかも差し押さえ、追い出してやってもいいんだぞ!!」
「はっ!!ご自由にどうぞ。でもあの家には差し押さえるもんなんて何も残ってないぞ?もう一度言う、お前らが何しようが心底どうでもいい。ただ俺に喧嘩売ってこなければ。じゃあな、あのデカブツちゃんと持って帰れよ?」
カインは言いたいことだけ言うと、颯爽とその場を後にした。そしてふと彼らは思い出す。カインは最初持っていた買い物の袋を一度として放していない。
ずっと荷物を持ったまま片腕一本であのマルスの相手をしていたのだ。
「ぐっ・・・ぐがぁっ・・ぎぃいいぃいいいい!!!!!」
在ろうことかカインに見下され見返され、返り討ちにあい言いたい放題言われる。常に誰よりも上の立場であったソリッズのプライドというプライドはズタズタにされ、あまりの悔しさに奇声を上げていた。
だが、マルスでさえ太刀打ちできない相手にソリッズが力で適うはずも無い。役人としての権力はまだ子供のソリッズには無く、カインが言うとおりあの家にはろくな物も残っていない。そもそもカインは拠点を移しているから意味は無いのだが、それはソリッズの知るところではなかった。
「ぐぅうぅぅうう!覚えてろよカイィン!!!この借りは絶対に返す!!!俺の恐ろしさを散々思い知らしめた後、地べたに這い蹲って延々と謝罪してもらうからな!!!!」
風を切って放たれた回し蹴りは確実にカインの後頭部に狙いを定めていた。だが不意を付いたつもりでいたのはこの場でマルスだけである。
「!?」
渾身の回し蹴りは、なんと後ろを向いたままのカインの腕によって糸も簡単に止められてしまった。
「何もしなきゃ手を出すつもりは無かったんだけどな。先に言っておくと俺は謝るつもりは無い。お前が悪いんだぜ?」
そういうとカインはマルスの足首をむんずとつかむと・・・
「おぉ・・?ぉお!おおおおおおおおおおお!!」
マルスの体が宙へ浮いた!カインよりも一回り大きいその体は簡単に浮き上がり、ブンと片腕一本で振り回されすっ飛んでいく!
ゴッシャアァァァァァァァ!!!!
マルスの体は空の木の樽の山へ派手に突っ込んだ。バラバラになった樽の瓦礫の山からはみ出た両足はピクリとも動く気配が無い。
「おわっ!そんなに吹っ飛ばすつもりは無かったんだが・・・やっちまったか?」
<さすがにあれ位じゃ死なないさ。曲がりなりにも『戦士』なんだろ、彼。カインももうちょっと自分の体の変化に慣れておいたほうがいいね>
そんな二人の戦闘を目の当たりにしたソリッズとその他は、その場に立ち尽くし動けずにいた。
目の前で起こったことに対し脳の処理が追いつかないのだ。カインの変わりように始まり、今までいじめ続けてきた相手に拳が当たらない。あろうことかあのマルスでさえ腕一本で宙に浮き数mも吹っ飛ばされたのだ!
しかもジョブランク最低のE、生産職の鍵師に戦士が、だ。
情報量が多すぎて混乱する一行に対し、カインは彼らに向き直る。
「いいか、よく聞け。この通り俺は変わった。お前たちが死ぬほどボコボコにしたせいで文字通り死んで生まれ変わった。今の俺ならお前らを俺が受けたように、同じ仕打ちをすることなんて容易い。だけど俺はそうしない。大サービスだ。あれだけ散々蹴られ殴られなじられ続けたそのすべてを忘れてやる。今の俺にとってお前たちなんてそんなもんだ。心底どうでもいいんだ」
「だけどそれでも突っかかってくるって言うんなら仕方が無いから相手をしてやる。まぁたぶんあぁなると思うぜ?」
そういってカインが指差す先には相変わらず動く気配の無いマルスの体。
「くっ・・・貴様!覚悟はできているんだろうな?『役人』の俺に楯突いたことを!貴様の家から何もかも差し押さえ、追い出してやってもいいんだぞ!!」
「はっ!!ご自由にどうぞ。でもあの家には差し押さえるもんなんて何も残ってないぞ?もう一度言う、お前らが何しようが心底どうでもいい。ただ俺に喧嘩売ってこなければ。じゃあな、あのデカブツちゃんと持って帰れよ?」
カインは言いたいことだけ言うと、颯爽とその場を後にした。そしてふと彼らは思い出す。カインは最初持っていた買い物の袋を一度として放していない。
ずっと荷物を持ったまま片腕一本であのマルスの相手をしていたのだ。
「ぐっ・・・ぐがぁっ・・ぎぃいいぃいいいい!!!!!」
在ろうことかカインに見下され見返され、返り討ちにあい言いたい放題言われる。常に誰よりも上の立場であったソリッズのプライドというプライドはズタズタにされ、あまりの悔しさに奇声を上げていた。
だが、マルスでさえ太刀打ちできない相手にソリッズが力で適うはずも無い。役人としての権力はまだ子供のソリッズには無く、カインが言うとおりあの家にはろくな物も残っていない。そもそもカインは拠点を移しているから意味は無いのだが、それはソリッズの知るところではなかった。
「ぐぅうぅぅうう!覚えてろよカイィン!!!この借りは絶対に返す!!!俺の恐ろしさを散々思い知らしめた後、地べたに這い蹲って延々と謝罪してもらうからな!!!!」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
覇者となった少年 ~ありがちな異世界のありがちなお話~
中村月彦
ファンタジー
よくある剣と魔法の異世界でのお話……
雷鳴轟く嵐の日、一人の赤子が老人によって救われた。
その老人と古代龍を親代わりに成長した子供は、
やがて人外の能力を持つに至った。
父と慕う老人の死後、世界を初めて感じたその子供は、
運命の人と出会い、生涯の友と出会う。
予言にいう「覇者」となり、
世界に安寧をもたらしたその子の人生は……。
転生要素は後半からです。
あまり詳細にこだわらず軽く書いてみました。
------------------
最初に……。
とりあえず考えてみたのは、ありがちな異世界での王道的なお話でした。
まぁ出尽くしているだろうけど一度書いてみたいなと思い気楽に書き始めました。
作者はタイトルも決めないまま一気に書き続け、気がつけば完結させておりました。
汗顔の至りであります。
ですが、折角書いたので公開してみることに致しました。
全108話、約31万字くらいです。
ほんの少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる