確率は100

春夏

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11. いざアインネートへ

忘れないで

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「…シキくん、苦しいよ…」あかん、溢れそうな気持ちのままヒカリをきつく抱きしめすぎてもた。離れようするとヒカリはパニックになって「やだ、違う、離しちゃやだ!」と俺にしがみついた。「やだ!もうやだ…」俺は阿呆や、泣かさん、と誓ったのに。壊さないように優しく抱きしめる。「すまんかった。ヒカリのこと忘れてまうなんて…」「失い虫のせいだ、ってわかってたよ。でも、もしかしたらシキくん、ほんとは俺を忘れたいんじゃないかって、だから忘れちゃったんだ、って…だから俺、忘れなきゃならないのは俺なんだ、って…」「んなわけないやろ!」思わず出た大声にヒカリの体が震える。あかんあかんよ、驚かせてどないすんの。陶器のような白い頬を伝う幾筋もの涙。「何度も言うたやろ。俺はヒカリのもんや。ヒカリでなきゃあかんのよ」

「…本当?本当に俺でいいの…」「ホンマにホンマや。辛い思いをさせてしもた…許してくれるか」ヒカリは俺の大好きなはにかんだ笑顔を見せて、子どものように声をあげて泣き出した。愛しい、てこういうことやろ。泣きじゃくるヒカリ。失いそうになった大事な宝物を包み込んだ俺も涙が止まらんかった。

「すんません、ホンマ、助かりました」泣き疲れて眠ってしまったヒカリを部屋において、改めて夫婦に礼をする。「まったく、気が気じゃなかったよ。薬ができる前に誰かがヒカリ君にちょっかい出したらどうしよう、って」「…手ェ出しとらんやろな…ゆうべヒカリどこに寝かせたん…」「ヒッ!出してない、出すわけないだろ!」「フフフ、リューだって立派なヤキモチ焼きじゃないの」「しゃあないやろ!あないに可愛ええんやぞ!」夫婦は爆笑。馬鹿にされとるわ。まぁええか、ホンマにここに居って助かった。「リュー、大事にするのよ。あなたは私たちの恩人だもの、幸せにね」「ところでリュー、失い虫はね、1度刺されたら2度は効かないんだ。だからここにいる間にヒカリ君も刺されておいた方がいいよ。ここなら薬があるし」

翌日、まんまと刺されたヒカリに「どなたですか?」と聞かれた俺が崩れ落ちたのは言うまでもないやろ。ごめんごめん、でもこれでおあいこだからね、と笑うヒカリとキスを交わした。
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