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11. コンサート

11-10 最終話 運命の相手

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side ヒカリ

俺が歌うことでこんなにたくさんの人が喜んでくれるなんて…。ステージをおりた俺に聞こえてきたのは「アンコール」「アンコール」の声。アンコールがあったら始めに歌った愛の歌をアカペラで歌うことになっている。「行かなくちゃ…」涙が止まらない俺を見て「そのまま出たほうがよさそうだ。さぁ行っておいで」社長さんに渡されたタオルでごしごし顔を拭きながらステージに上がる。大きな拍手に迎えられて、せっかく拭いた顔をまたタオルで隠した。

「…んっ…あの…えっと…」「ヒカリ!」え…今の…シキくん?その声をきっかけにホールのあちこちから俺の名前が呼ばれる。俺、歌わなきゃ。「…あの…今日は本当にありがとうございました。俺、すごく嬉しいです。これからもがんばります。最後にもう1度聴いてください。大好きな皆さんに贈ります」皆に伝わるように、シキくんに伝わるように。俺の声だけがホールに響いた。

「よくやったね!大成功!」また泣きながらステージから戻った俺を香山さんたちが囲む。「…っく…ん、俺、できた?」「なに言ってんの!最高だったよ!」「…よかったぁ…」「ファーストコンサート楽しかったかい?」「うん!みんなありがと。これからもよろしくお願いします」俺の頭にいくつもの手が伸びてきた。


side シキ

「忘れもんないか?」「うん。大丈夫」あれから1年、ヒカリが高校を卒業して、俺たちは一緒に暮らすことを許された。香山さんが見つけてくれたセキュリティとプライベートがしっかり守られたこのマンション、借り主は事務所。そこそこの家賃は今や売れっ子になってもたヒカリが出しとるっちゅうんがちょいと気に食わんけど、食費や生活費を俺が出すことで折り合いがついとる。時折ケンカになることもあるけど、俺がヒカリのモンでヒカリが俺のモンやっちゅうことに変わりはない。

「じゃ行ってくるね」「ん、気ぃつけてな。日曜は行くよって」今年の夏は全国6ヶ所のツアー、今週は仙台や。「仙台ってどこ?上?下?」リビングの壁に貼った地図を2人で眺める幸せ。時折アキや前田さんたちが遊びにきては笑い声を響かせる。料理の腕前は上がる一方。

俺の運命の相手はヒカリ。ヒカリの運命の相手は俺。「シキくん、俺がいなくて泣かないでね」「ヒカリこそ、1人で寝られるんか?」見つめ合って笑い合って唇を重ねる。絶対に離さへんよ、ずっと。
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