運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

10. お仕事いろいろ

10-3 予約

side ヒカリ

「ただいま！母さん！母さんにお土産！」事務所でもらった色紙を母さんに渡す。「え！ウソ！これ岩崎さんのサインじゃないの！」「あのね、俺に歌作ってくれるんだって！」「すごいじゃないの！あぁ、アンタの親でよかった…光理、会ったの？どうだった？カッコよかった？」…こんなに興奮してる母さんは久しぶり。コウが入試に合格した時以来ぐらいじゃない？「うん。サイコーの歌作るからな、って言ってた」カワイーカワイーって俺の頭ぐしゃぐしゃにして社長さんに蹴飛ばされてたけどね。やっぱり持ち帰りたい、って騒いでたけど、なんだったんだろ。「光理、しっかりやんなさいよ。あぁもう！」うん、母さん喜んでくれるもんね。サイコーの歌だって。俺も楽しみ。

『でね、母さん大喜びだったんだよ』『あの人、今も売れとるしなぁ。俺、文化祭の動画のこと知らんかって見てないんよ。今度歌ってくれや』『うん！』シキくんが聴いてくれてる時が１番上手く歌える気がするんだよな。

『ねぇシキくん』『ん？』『あのね、俺、学校に指輪したまま行ったんだよ』誕生日にシキくんがくれたシンプルな指輪は、今も俺の左手の中指にピッタリはまっている。きっとシキくんの左手の中指にも。『先生に怒られへんか？』『怒られてもいいもん。絶対はずさないからね』『俺かてはずさへんよ』『お揃いだもんね！』『…いつかきっとな、薬指に贈るから』『…約束？』『約束や。中指のは薬指の予約の印やねん』『…もし…もしお仕事ではずさなきゃならないときあったら』『あるかもしれんなぁ』『そしたら、予約キャンセルになっちゃう？』『キャンセルは受け付けへんねん。せやからそういう時はちゃんとはずしてええんよ』『俺、絶対キャンセルしないから。俺もシキくんの薬指、予約したからね！』誰にもあげないよ。『お互い予約済や』俺は指輪にキスをした。