運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

9. プレゼント

9-4 誕生日

side シキ

『シキくん、ほんとにいいの？』『ホンマのホンマや』土曜は俺の誕生日。『なにか欲しいものある？』ヒカリからの電話に『ヒカリ』と即答する。『前の晩から一緒に居って、12時におめでとうて言うて。誕生日もずっと一緒に居って』誕生日がちょうど土曜日だったことで、前田さんと香山さんに金曜の夜から日曜の夜までヒカリと過ごす許可をもろた。金曜の有休を申請し、昼間のうちに買い出しやら掃除やらを済ます。学校が終わって事務所にいるはずのヒカリを迎えに車を出した。

「広瀬さん、お久しぶりです」「いつもすんません。待ち合わせに使てしもて…」「いえいえ、ここなら安心ですから。光理君、もう少しかかります。コーヒーでも？」「すんません、いただきます」香山さんと向かい合って座る。「もうすぐクリスマスですねぇ。年末はご実家で？」「せやなぁ。香山さんは？」「まぁ、この仕事をしているとなかなか…」「あぁ、そうでしょうね。ご苦労さんです」「それに実家が温泉旅館なんですよ。田舎なんですが年末年始は忙しくて、行っても邪魔だと」「へぇ！そらまた…」「でですね、光理君と行きませんか？」

「え？」「クリスマスなんかは全然ヒマなんです。その時期は両親と兄夫婦だけでまわしているくらいで。イルミネーションもないようなところですからね。光理君ももうすぐ誕生日だし、僕から２人にプレゼントですよ」「…いや、でも…」「光理君は冬休みだし、広瀬さんがお休みとれるようでしたら是非。……いつも家の中だけで申し訳ない」香山さんに頭を下げられる。「うちが旅館でよかったと思ったのは初めてですよ」俺は席を立って「ホンマに…最高のプレゼントや」と礼を言った。

「シキくん！お待たせ！」「おう。もうええんか」「うん！」「ほな先に出とるで。お邪魔しました」車のエンジンをかけ、さっきの提案を思い返す。ヒカリと泊まりで温泉…あかん、嬉しすぎる。そんなん無理やと諦めとった。温泉どころか外出すらでけんと思うとった。ええプレゼントもろたわ…。窓を叩く音。最高のプレゼントが笑顔を見せとった。