運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

7. ＣＭ

7-9 ヒカは可愛い

side アキ

「…だから、なんでここで間違うんだよ。ただの足し算だろ？」「あ、そか…じゃこれで合ってる？」「ん。次はこれ…あ、保護者のメッセージ」「またかよ…ほんとみんな過保護なんだから」

あぁ、あの動画か。俺も見たけど、ヒカはやっぱり綺麗だった。黙って座ってると人形みたいだもんな。前に聞いたことがある。「黙ってる時、何考えてんの？」「え？……なにも？」ヒカがぼーっとしてる時はホントに何も考えてないんだよな。授業中だって勉強以外のことに気を取られてぼーっとしているわけじゃない。なんにも考えてない。そこにヒカの体があるだけ。マジで人形。そんなヒカが歌う時だけ人間になるんだぜ、そりゃ魅力的。

「ヒカ、広瀬さんといる時もぼーっとしてんの？」「は？してないと思うけど…」自信はねぇんだな。「…そんな余裕ないし…」「あぁ、慣らされてるから…」「！バカ！アキのエッチ！」…やっぱされてんだ。俺の可愛い何にも知らないヒカはもういない。なんだろ、淋しい？これが子離れってやつか？広瀬さん、ヒカ泣かせたらマジ許さねぇ。「ヒカ、動画の時もぼーっとしてたろ？アンチコメントがあったから、って香山さん心配してるぞ」「アンチ？」「そう。ぼーっとしてバカみたい、って」「へぇー。じゃその人も俺のこと可愛いと思ってんのかな」「は？」「だってみんな、バカだけど可愛いって言ってたじゃん」「うん…」「俺、カッコいいの方がいいんだけどなー。アキはいいよねぇ。カッコいいもんな」「あぁ、まあな…」

ヒカはバカだ。危機感もないけど理解力もない。だけどヒカは可愛い。ヒカを守る。ずっとそうしてきたし、これからもそうするつもりだ。たとえ、ヒカの手を引くのが俺じゃなくても。