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4. 縮まる距離

4-10 初めてのキス

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side ヒカリ

小さくドアを開けて広瀬さんを招き入れる。ドアにロックをかけたとたんに抱きしめられる。「もう我慢でけへん。ずっとこうやって抱きしめたかった」「こんなの…また泣いちゃう…」「今なら泣いてもええよ。俺が横で慰めてあげられるよって」

ビジネスホテルの狭い部屋、ベッドの上しか居場所がない。壁にもたれて座った広瀬さんが「おいで」と俺の手を取った。広瀬さんにもたれかかるように座らされて、その密着具合に俺の心臓がうるさい。「なんもせえへん。こうやって…ちょっとくっついてお話するだけや」「くっついて、お話…」「嫌か?足らへんのやったら」「足りてる!足りてます!」無理無理無理、だってもう死にそう…顔が熱い。体も熱い。「ヒカリ」広瀬さんが耳元で囁く。あ、俺もう天国にいるのかも。「ヒカリが好きや」


side シキ

光理君が、ヒカリが俺の腕の中にいるやなんて夢と違うか。耳まで真っ赤や。「ホンマに可愛ええ…」可愛ええ、可愛ええ、と何度も告げる。「…広瀬さん…俺もう死んじゃったかも」「そら困るわ。これからなんべんだって言うてまうんよ。ホンマに可愛ええんやから」「…俺は可愛い?」「あたりまえや。…ヒカリが好きや。恋人になってほしいんよ。俺を信じてくれるか…?」震えるように微かに頷いて「俺も広瀬さんが好きです」とはっきり応えてくれた。たまらん。幸せや…せやけど俺は欲張りやねん。「名前で呼んで」「名前で…無理!そんなの無理…」「シキが好きや、て言うてほしいねん」長い長い沈黙のあと、形のいい唇が「…シキ、くんが好きです」と伝えてくれた。…俺の方こそもう無理。なんもせえへん、て言うたけど無理や。「…ヒカリ。目、閉じて…」驚きに見開いた瞳が静かに伏せられて、触れるくらいの微かなキスを交わした。

「ちゃんと鍵かけんねやで」「うん…」「もう夜遅いし、明日も事務所行くんやろ」「うん……シキくんもお仕事」「せや。寝なあかんやろ。ヒカリもお休み」「…あの!あのね、えっと…」「ん?」「…ちゃんと寝る。だから…お休みの、あの…」最後まで待たずに唇をあわせる。「…合っとった?」「…うん…エヘヘッ。お休みなさい」「お休み」ドアを閉める。チェーンをかける音。…俺のモンや、ヒカリは俺のモンや。叫びたいような気持ちでエレベーターに向かった。
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