運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

4. 縮まる距離

4-4 ヒカリ

side ヒカリ

「今日、テレビ出るんだろ？生じゃないんだ？」学校で友だちに聞かれた。「うん。もう結構前に収録したやつ。初めてだから緊張したよぉ」「他の芸能人に会った？」「司会の人だけ。俺、知らない人たくさんいるの無理…」「前田、人見知りだもんな」「うぅー」「なんだよ、うぅーって。とにかく今日のテレビ、見るからな」「うぅー」周りが笑い転げた。うぅー…

学校帰りの電車でも声をかけられる。俺は相変わらずペコペコしてるけど、変装とかした方がいいの？変装ってどうやるの？

家では母さんが大急ぎで夕飯のしたくをしていた。「テレビに間に合わない！光理、手伝いなさい！」母さん、テレビ見なくても俺ここにいますけど。「屁理屈はいらない！さっさと手伝え！」叱られて慌ててうがい手洗い。なんでテレビの俺のために俺が怒られなきゃならないの！

［８時からですよ。恥ずかしいですけど…見てくれたら嬉しいです］［今まだ電車やねん。駅に着いたら走って帰るで。録画もしたけど、ヒカリ見逃すわけにはいかんからな！］…え？ヒカリ？…違うよね、きっと hikari ってうつの、面倒だっただけだよね……いつか俺のこと、ヒカリって呼んでくれるかな…震える指で、気をつけてね、のスタンプを押した。


side シキ

あの子は“ヒカリ”に気づくやろか。言い訳を用意するやなんて、我ながら卑怯な…。改札を飛び出してあの公園を横目に走る。きっと少しずつ近づいとる。伝えればきっと返してくれる。せやけど、足が止まる。それでええんやろか。ヒカリは俺の運命の相手。せやけどヒカリの運命の相手は他に居るんと違うか。運命を強引に捻じ曲げて俺にしてもうてええんか…。とにかく帰らな。俺はまた走り出した。