運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

3. デビュー

3-9 発売日

side アキ

今日はヒカのＣＤの発売日。ヒカにもらったけれど、うちも売り上げに貢献しよう、って母さんが予約した。駅前のショップで予約するとポスターがついてくるから、学校帰りに受け取るように頼まれた。うちにはポスターじゃなくて本物が来るけど。俺の彼女もそうだけど、中学の友だちはだいたい買ったようだ。みんなヒカの歌を知ってるからな。

それにしても…広瀬さんちに行った、ってどういうことだよ。あの言い方…広瀬さんが呼んだわけじゃなさそうだよな。ヒカが広瀬さんちに行くことを望んだ、ってこと？そしてそれを広瀬さんが受け入れた、ってことだ。何もされなかった、って言ってたよな。さすが広瀬さん、やっぱりちゃんとした大人だった。ヒカは広瀬さんの気持ちに気づいてんのかな。いや、バカだもんな…自分の気持ちにすら気づいてなさそう。とにかくいまは大事な時期だろ。ヒカもわかってると思うけど…帰りに寄るか。ついでにポスターにサインしてもらお。…なんて思ってた俺は甘かった。ヒカがうちにいる、と母さんから連絡をもらって走って帰る。

「ヒカんちの前、ヤバくない？」「香山さんには連絡したんだけど…とにかくアキんちに行って、って言われて。母さんたちはじいちゃんちに避難済み。父さんは仕事終わったらここに来るって。ところで香山さん、なんでアキんち知ってんの？」「保護者隊だからかな？」「それ、なんなんだよ…」


side 社長

光理君の発売日は上々の滑り出し。ダンスの評判がいい。正直、あそこまで踊れるようになるとは思わなかった。無表情で踊り切ったあとの笑顔がたまらない、と話題になっている。あの部分、ＣＭに入れておいて正解だった。もう少し喋れるようになればバラエティの仕事もとってくるんだが…。アキ君からは「ヒカをおバカタレントとして売りたいならいいですけど」と鼻で笑われた。あのミステリアスな雰囲気を壊すことなどできるわけがない。しかしこれでまた次が出せる。あの子を活かす曲。今回はJ-POPとダンスナンバーを選んだが次はどうする。あの子は何でも歌いこなすぞ。楽しみだ。しかし不思議なもんだよなぁ。ダンスナンバーなのに癒される感じってなんなのか。ラップでも癒されたりして…試してみようか。