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1. 出会い

1-10 3度め

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side シキ

季節はもう春。今朝も桜の開花がニュースになっとった。毎朝毎晩通るあの公園の桜もちらほら咲き始めとる。あのクリスマスからまだ1度も会えていない。縁がないんやろか…。「広瀬さん、あのアイドルの結婚のニュース見ました?運命の相手に会えました、ですって。いいですよねぇ」アホらし。何が運命の相手や。とりあえず俺の相手はアンタやないで。曖昧に返事をして仕事を再開する。今日定時であがれたら、あの公園で1人で花見でもしよか…

「最近つきあい悪くね?あ、ついに彼女できたとか?」あの子が居るかもしれん、と飲みの誘いを断ることが増えた俺に同僚が見当違いなことを言いよる。「そんなんと違うわ」と手を振って家路を急ぐ。

おっ、今日は居るやんか!徐々に増えていく人だかり。わかるわ、ハマってまうねん。この声がたまらんのよ…。「…あの…聴いてくれてありがとうございました」そう、この声…「おわっ!あ、すまん…俺また…」「わかります。安心する声ですよね…」隣にいた女の子がそう言い残して立ち去る。残っているのは俺たちだけ。「…今日はアイツと一緒やないん?」「え?…あぁ、アキ…はい。今日は1人です」「そか。今日、聴けてよかった。次も楽しみにしとるよ」「…あの、俺、もうここには来られないんです」「へ?」「えっと…デビューが決まって…」「ホンマか!おめでとう!そうかぁ…」

「俺、ここには3回しか来てないんです。毎回聴いてくれてましたよね。ありがとうございました」…もしかしたらこれは運命なのかもしれん。このままこの子を帰してしまったら俺は間違いなく後悔する。

「…このあと…」言葉に詰まる。誘ってもええんやろか。この子はまだ子どもや。俺なんか……いや、お祝いや、デビューのお祝い。お祝いにメシを奢る、それだけや。「このあと時間あるか?デビューのお祝いにメシでもどうや」「…え…そんな…帰らなくていいんですか。奥さんとか…」「俺は1人モンやし。君は門限とかあるんかな」「えっと…連絡すれば大丈夫だけど…」「怪しいモンちゃうよ。ほら」免許証を見せる。「写真撮ってもええよ」そう言うと戸惑っていた顔が笑顔に変わる。あかん、近くで見たら破壊力がバツグンや…。「怪しいなんて思ってないです。あの、俺の家、隣の駅が最寄りなんです。そっちまで行ってもいいですか」「もちろん」2人で駅に向かった。
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