運命の相手 〜 確率は100 if story 〜

1. 出会い

1-6 絶対そうだ

side アキ

「明日、隣の駅前で歌う」ヒカが言う。「またあのサラリーマンの人いるといいなぁ」いや、ダメだろ。ヒカは危機感が足りなすぎる。「俺も行く。久しぶりにヒカの歌聴きたいし」

…こいつだ…絶対こいつだ。早足で輪に加わり刺すような視線でヒカを見つめてる。絶対そうだ。歌だけじゃない。いや、もちろん歌も気に入ってるんだろうけど、どう見たって目当てはヒカだ。サラリーマンが声をかける前にさっさとヒカの手をひいた。

「ねぇねぇ、さっきアキの前にスーツの人いたでしょ。あの人だよ、前に褒めてくれた人」「…やっぱり…」「ん？」ヒカが俺を覗き込む。だからその顔をやめろ。俺より背が低いヒカの上目遣いははっきり言って凶器だ。慣れた俺でさえクラクラするっての！「いや、なんでもない。それより今日の歌、すげえな。ハレルヤなんてどこで覚えた？」あのね、とヒカが話し出す。語尾が伸びる話し方。それもやめろ。顔に似合いすぎる。あぁ、保護者として心配が尽きない。

ヒカを家に送り届ける。「今日はありがと。メリークリスマス」「おう、またな。メリークリスマス」…もし、もしあのサラリーマンがいい人だったら。そしたら俺は保護者を辞められる…？