孤独王

新しい先生

校長先生の話も予想よりもかなり早く終わり、司会進行役の先生がマイクを手にとり話しだす。
「それでは続いて新任の先生方の紹介をしていただきます。それでは、新しい先生のみなさん、ステージにお願いします。」
すると体育館の脇の方で並んでいた先生方の中から三人の先生たちが歩いてステージに並んだ。その中には高橋先生の姿もあった。
（やっぱり新しい先生だったんだ）
僕は心の中で呟く。
「では校長先生、新任の先生方の紹介をお願いいたします。」
「分かりました。早速紹介していきたいと思います。それでは、一番右にいる先生から…」
と校長先生がマイクを手にとり話し出す。
二人の先生の紹介が終わり、いよいよ高橋先生の出番だ。
「みんな！おはよぉ！」
校長先生が話すよりも先に高橋先生が大きな声で話し出した。その声は体育館全体に響き渡り、微妙な空気が漂った。体育館脇に並んでいる先生たちが焦った顔をしてなにやら話している。
「はい、おはようございます。えぇっと、高橋先生は元気がものすごくある先生です。担当していただくクラスは五年二組です。小学校の先生は何でもできなければいけませんが、高橋先生の好きな教科はなんですか？」
校長先生の質問に高橋先生は大きな声で答える。
「国語ですっ！」
その言葉に、体育館にさっきまで漂っていた微妙な空気は一瞬のうちに凍りつき、静かだった体育館が少しガヤガヤし始めた。
「えっ、俺てっきり体育専門の先生だと思ってたんだけど…」
「私も…」
などという会話が聞こえてくる。その声を遮るようにスピーカーから校長先生の声が聞こえてきた。
「みなさん少しお静かにね。私も最初は驚きました。」
その言葉に少し恥ずかしそうに笑う高橋先生。
「紹介に戻りますが、高橋先生は教師人生一年目の新入生と同じ一年生です。この学校のことも分からないことが多いと思うのでみなさんからたくさん話しかけてあげてくださいね。それではこれで新しい先生方の紹介を終わりますね。」
そう言い終わると司会進行役の先生から降壇の合図とともに閉式の言葉が述べられ、このなんとも言えない全校集会が幕を閉じるのだった。