確かに俺は文官だが

パチェル

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第4章

それ以上でも、それ以下でもない14

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 そのあとの議題は、国外へ探索に行くときの計画も立てておいた方がいざという時はいいだろう、ということでセイリオスが話すことになった。



 国外で情報が入った時に国外へすぐに出立できるように、事前に話し合っておく方がいいだろうと思ったからだ。

 まずはヒカリに近隣諸国の地理の基本情報を叩きこんでおく。以前から読んでいたのに加えてどういったルートを使うか、文化などの情報も入れておいてもらう。


 旅するのに資金も潤沢とはいえ、ぼったくられないように物価などの情報や、こまごました情報を現地で仕入れるときの仕入れ方なども教えておく。
 大抵は乗合馬車などで進むが、徒歩の場合もある。


 そういったときの野宿の仕方もレクチャーする。因みにこれは警吏課の人から聞きかじっていたのか呑み込みが早かった。


 旅行ガイドブックなる物を今後ちょっとずつ作っていくことという計画をとりあえず立て、何かハプニングがあった時はなるべく治安のいい所に逃げる事ということで、各地の治安のよい所をピックアップすることを脳内でメモを作る。


 もし、存在も確かでない敵が来た場合、ヒカリに知識がないのが一番困る。


 いつもセイリオスが一緒にいるつもりだが、そううまくいかないこともあるだろう。単独行動をどうしてもしなくてはいけなくなるかもしれない。その時に少しでも助けになればとそう思って。


 目の前でスピカが今度、冒険者ギルドへヒカリを連れていく約束をしている。
 喜んだヒカリがお返しに何か欲しいものはないかと訊ね、スピカが笑う。



「欲しいもの……、ないよ。ない。そうだなぁ、だったら代わりに明日のベッドメイキングはヒカリに頼んでもいい?」
「いいよ! もちろん、まかせて! すっごい、端っこまでピシってしとくから」
「そう、任せるよ。じゃあ、ベッドのシーツが端まできれいだったらお土産を買ってくるよ」
「わぁ、……ちょとまて、それじゃあ意味ないよー。最初っから、繰り返しにならない?」
「フフフ、ばれたか……お土産何がいいかなぁ」
「うーん……って、『僕も何を悩んでるんだよ』! もうっ! スピカには、いつまでたっても、何もお返しできないかもっ!」



 そして、笑いながら伸ばしかけた手を引っ込めているのを、セイリオスは不思議に思いながら眺めていた。








 物を分解するときはそれなりに気を付けなければただの破壊行為になる。


 出来る限り傷つけないように、分解していく。そのままの形を最大限残す。
 まずはよくよく観察することが大切だ。

 一つ進んだら観察、外した順序を覚えておくことも必要だろう。


 そしてよそ見しない。道具を使っての一つ一つの分解は、パーツに気を使って何も壊さないようにする。もちろん怪我もないようにするのが第一だ。

 分解したパーツはわかるように整理整頓しておかないといけない。
 トレーに入れたりして小分けにしたり、飛ばないような環境を作って並べておくのもいいだろう。ただその場合、とても細かいものやパーツが多いものなどの時は大変なことになるので気を付けておいた方がいいだろう。



 なんて、ちょっとばかりどうでもいい話、誰も興味なさそうな話をメモを取りながら真剣に聞いているヒカリを前に、今一度注意事項を述べていく。



「で、どれを分解する? ものによっては初心者には危険なものもあるからな」
「どれでもいいの?」


 ヒカリの誕生日プレゼントにスピカが丸一日あげたというので、セイリオスも一日をプレゼントしてみたところ。

 セイリオスと分解したい!


 と言われた。
 修理のために分解はしたことがあるヒカリだが、遊びで物を分解したことはなく、よくセイリオスが分解しているのを寝る前の机の横で見られていることはあった。


 俺は楽しいんだけど、それでいいのかという言葉は結局最後まで口にしなかった。
 せっかくの誕生日のお願いごとに水を差すのもどうかと思うし、顔がにんまりしていたからいいのだろう。


 何を分解しようかという話になって、家のチャイムの調子が悪いからそれを分解して修理しようと言われたのだが、あれは結構仕組みがややこしく、呪術が使われているので初心者向けではない。
 なんならセイリオスですら気を使う代物だ。



 アンティークと言っても過言ではないこの家自体は、他の家とは少し違う。
 ということでそれは諦めてもらうことになった。


 と言うわけで、目の前のヒカリと一緒にアンティークの魔道具が置いてある倉庫にいる。埃っぽいので二人してマスクをしている。因みに頭巾とゴーグルもつけている。


「これはなに?」
「それは時計だな」

「これは?」
「それは自動で写真が毎日入れ替わる写真たてだ」

「これは?」
「足音を消す靴底だな」

「これは?」
「中に入れると中身が崩れにくくなる弁当箱いれだ」



 このままだとこれは何とそれは何々だなで一日が終わってしまいそうな予感がしながらも、ヒカリのこれは何にセイリオスは応えてしまう。




 自分の好きなものに興味を持ってもらえるのは、ヒカリ風に言うならワクワクするものだ。だからきっと永遠に応えてしまうのは明白だと思った。




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