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第4章
忙しいのは変わらない14
しおりを挟むしかも魔道具関連課のローブは色味が深緑と場所によっては黒にも見えちゃうんじゃない? ぐらい地味なのか、目立たないのが悪いのかよく声をかけられる。
「君、こんなところに何の用かな? 親御さんは?」
「こんなところまで入り込んじゃって、出口まで案内してあげよう」
とか。
……全国、いや、全世界の人に言いたい。
子どもだと決めつけて話しかけられるとすごく気まずいからやめて欲しい。
ちょっと語尾を伸ばされて話されると、スイマセン。僕もうこちらの世界では恐らく成人している年齢と思われまして、しかも臨時職員として働かさせてもらっているんです。だから仕事でして……、なんて言いづらい。
しかも、すらすら言えないっ!
言葉がちょっと拙いのがいけないのか、あぁ言葉がわからないのかな? とかでさらに。
「あのね? ちょっとだまってきいててね? うんうん、ここはねぇ、はいってきたらだぁめ、だめなの。だからとりあえず、帰ろうか? 迷子ならとりあえず警吏課かな」
とか言われてあわあわ。
これを警吏課の人に知られたときには、たぶん、ダーナーの腹がよじれると思う。
時々、ローブに気付く人もいるけど。
「あれ、その服。魔道具関連課?」
って聞かれて、うれしくってうんうん頷くと。
「じゃあ、親御さんがそこの人なのかな。 服、ぶかぶかで可愛いな」
とか言われる始末。
可愛いなとか言われてもうれしくない。
親御さんは子どもに服着せてどこ行ってるんだ。
というか、子どもがいたずらで服着て歩き回っているとか思われているのかな。
それも聞こえてるから。
独り言風で言われても聞こえてるから。
移民だけど、言葉結構わかるから。
で、聞こえててわかるとわからないの間をとった微妙な感じで変なリアクションになる。
首をかしげているか会釈しているか、笑っているか、恥ずかしいかみたいな変なリアクションになる。
というわけで職場とかで話すときはあんまりリアクションに困るようなことは言わないで欲しい、と切実に思うヒカリなのである。
かといって誰に文句が言えるわけもなく。
服がぶかぶかなことだって仕方がない。
ケーティ課長が急いでことを進めたら服のサイズがなかったのだ。
そもそも、そのサイズは用意しておりませんと言われた。
ボタンを付け直すとかはしてもいいけど、サイズを思い切り変えてしまうのは制服の改造に当たるからできないと言われて、ちょっとしょんぼりしてしまった。
予算が新しく降りるまではぶかぶかでいるしかないのだと言われ、全然気にしてないですよ、平気ですよって思ってたのにいざ言われると、へこんだ。
しかも何回も言われるとべこべこにへこんだ。
働く場所で子ども用のサイズの服なんて用意しているわけもないかと考えて。
そう言えば、以前借りたつなぎも折り曲げて使ったなぁと思い出し。
というわけで身長が伸びない悩みに戻るわけだ。
伸びたら何の問題もないじゃん?
「職場の悩みはいじょうです」
いつも聞いてくれているからヒカリの話もきくよ、悩みとか愚痴とかないの? とスピカに食後のまったりタイムで聞かれて話したらスピカが下を向いて顔を隠して震え出した。
馬車でセイリオスに話した時は、セイリオスはそうかと言って馬車がついたので話がそこで終わっていたのだが。
因みにセイリオスは思っていた方の悩みではなくて安堵したので、リアクションがスピカとは違っただけで命拾いしただけだった。
「……、スピカ、わらてる?」
「ううん、わら、ってない」
「……今のはなしのどこにわらうとこあた?」
「わらって、ないです」
「うわー!! セイリオスー、スピカがひどいー」
「スピカはそんなもんだろう」
たぶんその様子を想像して可愛いと面白いが渋滞して身もだえているのも入っているのだとは思うが、とセイリオスは思ったけれど、おそらくここで可愛いからと言ってはいけない気がする。
言ったらセイリオスもひどいの分類に入れられるので言ってはいけない気がする。
だからコメント少な目でテーブルで突っ伏す赤髪を見るだけにとどめておいた。
「ちびってバカにしたー」
「してないしてない!」
絶対したなと確信してヒカリはこの話をもうやめることにした。
確信したのは、スピカが学校の先輩と同じリアクションだったからだ。
どうせ身長がある人にはわからない悩みなのだ。
仕方がない。
ヒカリの計画では身長が伸びるも予定に入れていたのだが、こればっかりはしょうがない。
希望として置いておいて、努力は怠らないでおこう。
伸びなかったらその時はその時だ。
移民となってそんなに経っていないが結構順調なのだし、と納得させる。
仕事が決まってお給金がもらえるようになった。
先立つものが定期的に手に入ると思うだけで、少し気持ちに余裕が出てきた。
そうそう、大丈夫。きっと大丈夫。
でも、身長のことを笑ったスピカは睨んでおいた。
「ごめんってヒカリ。かわいくって笑っちゃったんだよ」
スピカがごめんというわりには楽しそうに謝ってくるので、ヒカリもつんとした返事をする。
「かわいくて? ことばまちがてるよ」
ヒカリだって早く一人前に仕事ができればいいなと思うが焦っても仕方がないのはわかっている。
身長と同じ。
だから頑張るしかないのだが、他にも色々理由があるのだ。
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