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第1章
聖者が街にやってきたのをまだ知らない2
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気付けば粗末な部屋で寝転がされていた。真っ暗なのにどうしてそう思えるか。
下は固くて冷たい床。埃っぽい床ははたかなくても空気中に埃が舞っている。所々ささくれだって剥がれている床板が頬を傷つけた。
ここは祈りの間じゃない事だけはわかった。僕は失敗してしまったのだろうか。
御告げを失敗したらどうなるのか。追放か。
寒くて寒くて体が震えた。祈りの間で7日、食を絶っていたから、考えもぼんやりしている。
つい、温かいものを探してしまった。こんな場所に温かいものなんて無いだろうに。
つんと触れたそれをギュと握りしめた。
返ってくる事はないと思っていたのに温かい手が自分の手を握った。驚いて手を引っ込めようとしたら笑うような声が聞こえた。
とても心地よい声で。お腹がじわりと温まった。
その声の主の手はあまり大きくないので大人ではなさそうだと思ったのだが、その手の主は僕の頭を何度か撫でた。それに安心してしまう。
突然小さな光がポッと灯った。その光は天井を照らした後はゆっくり周りを照らしていき、粗末なベッドを見つけた。
魔法か魔道具かどちらだろうかと考えていたら、脇の下に手を入れられ子どものように抱き上げられた。
こんな風に抱き上げられるなんて、恥ずかしい。もう子どもじゃないのに。
それなのに安心して身を任せてしまった。僕より少しだけ背の高い男の子なのに僕の事を軽々と持ち上げてしまった。
怖くてしがみつくとまた、ふふっと笑って背中をポンポンとされる。
ベッドの上にゆっくりと下ろされた。
男の子は布団を広げてうーんと唸っている。そうしてどこかへ行き、何かをガサゴソと探って戻ってきた。
バサッと布を被せられた。薄いのにとても温かい。それを隙間なく被せてポンポンとするとその場を立ち去ろうとする。
思わずまた、裾をつかんでしまった。
男の子は立ち止まって困惑した雰囲気を出した。ぐいっと引っ張り、隙間なく被せられた布団を剥いで隣を叩く。どこかにいってしまう気がして強引に隣で寝かせようとした。粗末な布だけ持ってどこにいくの。離さないぞと思っていたのにお腹の虫がキュルルと鳴いた。
男の子が小さく吹き出したのがわかって恥ずかしくて手を離してしまった。男の子はすぐに何処かへ行ってしまった。
またガサゴソ。
一緒に寝てくれないのかな。違うとこで寝るのかな。
心細くなったところで男の子が戻ってきて、隣に座って何かを差し出す。
さっきの灯りをまたつけて、それを照らす。
クッキー? かな?
不思議に思っていると男の子が一つを半分に折ってパクリと食べてにっこりした。その半分を渡されて。
僕もパクリと食べた。
美味しい! 僕の家でも食べたこと無い味だ。干したフルーツの味がする。ナッツも入ってるみたいだけど。
男の子は液体の入っている瓶のようなもののふたを開けてそれもゴクリゴクリと自分で飲んだ。
先程と同じようにそれを渡してくる。
持つと瓶よりも柔らかい、布ではないそれを口に当てる。美味しい。少し苦いけどお茶だろうか。
男の子はもう一つクッキーを渡してくれた。美味しくて後二つ食べた。食べてると男の子が僕の顔を灯りで照らした。
この灯りを出しているような道具は見たことがない。僕はまだ15才になってないから魔法を外部に出して使えない。この子も道具を使っているから同い年ぐらいかなと考えていたら男の子がなにか聞いてきた。
よくわからなくて聞き返すけどやっぱりわからなかった。
男の子のジェスチャーで僕の頬の事を聞いてるみたいだ。傷の事だろうか。頷くと目をつぶってほしいとジェスチャーで示された。目をつぶると頬が滲みて、驚いて目を開ける。そして何かを頬に貼られた。
どうやら傷の手当てをしてくれたみたいだ。
ありがとうと小声で伝えたがやはり通じない。
男の子は親指を立ててウインクを一つ寄越した。
国が違うのだろうか。それにしても雰囲気のわからない言葉で。
僕があくびを一つしたら、男の子が僕の横に寝転んだ。そして、隣をポンポンと叩く。
一緒に寝てくれるんだと嬉しくてすぐに横になる。二人で一つの粗末なベッドは狭いけどとても暖かくてすぐ寝てしまった。
どうやら、絶望的な状況かもしれないけれど、寝てしまうぐらい安心した。
朝起きてもあれはまだいて僕より早く起きて僕は布団でグルグル巻きにされていた。誰か部屋に来たようで話している。僕には気付いていないようだ。光の下で見た彼は金色の髪を短く整え、青い瞳をしていた。僕みたいだと思った。
昨日色々な魔道具を持っていたことや服装から貴族か裕福な商人の子どもにも見える。
「は? だから何言ってるかわかんないんだけど。だーかーら、ここで大人しくしとかないといけないの。分かる? 何ベッドがどうかした? お腹が何なの? もっと寄越せって? バカ言ってんじゃないよ。働かない奴に食うもんなんか寄越すかよ」
話していた女の子はバンッと大きく扉を閉めて出ていってしまった。
そこでモソモソと起き上がる。どうやったのかミノムシのように布団が巻き付いていて剥がれないのだ。
男の子はそれに気づいて駆け寄ってくる。鉄の飾りを下に引っ張りミノムシ状態から解放された。
それに感心していると男の子が目の前にスープの入った皿とパンを一つおいた。
なるほど、先程は一人分しかないからもう一つ寄越せといっていたのか。部屋をぐるりと見回した。
高い位置にある小さな窓が一つ。今は開いている。恐らくあの窓辺に置かれた机とそのうえにいすがあるから、彼が開けてくれたのだろう。空気が夜より澄んでいる。
周りを確認して彼を手で呼ぶ。彼はこちらにやって来てこてんと首をかしげる。
そして、僕はゆっくりと部屋のものを指差す。
椅子、一つ。
机、一つ。
ベッド、一つ。
枕、一つ。
布団、一つ。
その度に人差し指を一回立てて示す。
パン、一つ。
そして、足枷、一つ。
彼は紹介し終わったものをぐるりと見回し、真剣な目で自分と僕を指差し、僕の国の言葉で一つと声を出した。
そして、僕は足枷を指差し、あれは、僕のと指差す。
彼を指差し、君の、ではないと告げる。
何度か繰り返し彼は目を見開いた。何か納得したのか親指を立てた。
わかったということだろうか。誘拐されたのは恐らく僕で。
君は巻き込まれただけだということに。
彼は僕を指差し、『僕の』と言う。
どういう事だろうか。不思議に思い首をかしげると相手も首をかしげた。
下は固くて冷たい床。埃っぽい床ははたかなくても空気中に埃が舞っている。所々ささくれだって剥がれている床板が頬を傷つけた。
ここは祈りの間じゃない事だけはわかった。僕は失敗してしまったのだろうか。
御告げを失敗したらどうなるのか。追放か。
寒くて寒くて体が震えた。祈りの間で7日、食を絶っていたから、考えもぼんやりしている。
つい、温かいものを探してしまった。こんな場所に温かいものなんて無いだろうに。
つんと触れたそれをギュと握りしめた。
返ってくる事はないと思っていたのに温かい手が自分の手を握った。驚いて手を引っ込めようとしたら笑うような声が聞こえた。
とても心地よい声で。お腹がじわりと温まった。
その声の主の手はあまり大きくないので大人ではなさそうだと思ったのだが、その手の主は僕の頭を何度か撫でた。それに安心してしまう。
突然小さな光がポッと灯った。その光は天井を照らした後はゆっくり周りを照らしていき、粗末なベッドを見つけた。
魔法か魔道具かどちらだろうかと考えていたら、脇の下に手を入れられ子どものように抱き上げられた。
こんな風に抱き上げられるなんて、恥ずかしい。もう子どもじゃないのに。
それなのに安心して身を任せてしまった。僕より少しだけ背の高い男の子なのに僕の事を軽々と持ち上げてしまった。
怖くてしがみつくとまた、ふふっと笑って背中をポンポンとされる。
ベッドの上にゆっくりと下ろされた。
男の子は布団を広げてうーんと唸っている。そうしてどこかへ行き、何かをガサゴソと探って戻ってきた。
バサッと布を被せられた。薄いのにとても温かい。それを隙間なく被せてポンポンとするとその場を立ち去ろうとする。
思わずまた、裾をつかんでしまった。
男の子は立ち止まって困惑した雰囲気を出した。ぐいっと引っ張り、隙間なく被せられた布団を剥いで隣を叩く。どこかにいってしまう気がして強引に隣で寝かせようとした。粗末な布だけ持ってどこにいくの。離さないぞと思っていたのにお腹の虫がキュルルと鳴いた。
男の子が小さく吹き出したのがわかって恥ずかしくて手を離してしまった。男の子はすぐに何処かへ行ってしまった。
またガサゴソ。
一緒に寝てくれないのかな。違うとこで寝るのかな。
心細くなったところで男の子が戻ってきて、隣に座って何かを差し出す。
さっきの灯りをまたつけて、それを照らす。
クッキー? かな?
不思議に思っていると男の子が一つを半分に折ってパクリと食べてにっこりした。その半分を渡されて。
僕もパクリと食べた。
美味しい! 僕の家でも食べたこと無い味だ。干したフルーツの味がする。ナッツも入ってるみたいだけど。
男の子は液体の入っている瓶のようなもののふたを開けてそれもゴクリゴクリと自分で飲んだ。
先程と同じようにそれを渡してくる。
持つと瓶よりも柔らかい、布ではないそれを口に当てる。美味しい。少し苦いけどお茶だろうか。
男の子はもう一つクッキーを渡してくれた。美味しくて後二つ食べた。食べてると男の子が僕の顔を灯りで照らした。
この灯りを出しているような道具は見たことがない。僕はまだ15才になってないから魔法を外部に出して使えない。この子も道具を使っているから同い年ぐらいかなと考えていたら男の子がなにか聞いてきた。
よくわからなくて聞き返すけどやっぱりわからなかった。
男の子のジェスチャーで僕の頬の事を聞いてるみたいだ。傷の事だろうか。頷くと目をつぶってほしいとジェスチャーで示された。目をつぶると頬が滲みて、驚いて目を開ける。そして何かを頬に貼られた。
どうやら傷の手当てをしてくれたみたいだ。
ありがとうと小声で伝えたがやはり通じない。
男の子は親指を立ててウインクを一つ寄越した。
国が違うのだろうか。それにしても雰囲気のわからない言葉で。
僕があくびを一つしたら、男の子が僕の横に寝転んだ。そして、隣をポンポンと叩く。
一緒に寝てくれるんだと嬉しくてすぐに横になる。二人で一つの粗末なベッドは狭いけどとても暖かくてすぐ寝てしまった。
どうやら、絶望的な状況かもしれないけれど、寝てしまうぐらい安心した。
朝起きてもあれはまだいて僕より早く起きて僕は布団でグルグル巻きにされていた。誰か部屋に来たようで話している。僕には気付いていないようだ。光の下で見た彼は金色の髪を短く整え、青い瞳をしていた。僕みたいだと思った。
昨日色々な魔道具を持っていたことや服装から貴族か裕福な商人の子どもにも見える。
「は? だから何言ってるかわかんないんだけど。だーかーら、ここで大人しくしとかないといけないの。分かる? 何ベッドがどうかした? お腹が何なの? もっと寄越せって? バカ言ってんじゃないよ。働かない奴に食うもんなんか寄越すかよ」
話していた女の子はバンッと大きく扉を閉めて出ていってしまった。
そこでモソモソと起き上がる。どうやったのかミノムシのように布団が巻き付いていて剥がれないのだ。
男の子はそれに気づいて駆け寄ってくる。鉄の飾りを下に引っ張りミノムシ状態から解放された。
それに感心していると男の子が目の前にスープの入った皿とパンを一つおいた。
なるほど、先程は一人分しかないからもう一つ寄越せといっていたのか。部屋をぐるりと見回した。
高い位置にある小さな窓が一つ。今は開いている。恐らくあの窓辺に置かれた机とそのうえにいすがあるから、彼が開けてくれたのだろう。空気が夜より澄んでいる。
周りを確認して彼を手で呼ぶ。彼はこちらにやって来てこてんと首をかしげる。
そして、僕はゆっくりと部屋のものを指差す。
椅子、一つ。
机、一つ。
ベッド、一つ。
枕、一つ。
布団、一つ。
その度に人差し指を一回立てて示す。
パン、一つ。
そして、足枷、一つ。
彼は紹介し終わったものをぐるりと見回し、真剣な目で自分と僕を指差し、僕の国の言葉で一つと声を出した。
そして、僕は足枷を指差し、あれは、僕のと指差す。
彼を指差し、君の、ではないと告げる。
何度か繰り返し彼は目を見開いた。何か納得したのか親指を立てた。
わかったということだろうか。誘拐されたのは恐らく僕で。
君は巻き込まれただけだということに。
彼は僕を指差し、『僕の』と言う。
どういう事だろうか。不思議に思い首をかしげると相手も首をかしげた。
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