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12 私は

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「―――――リアン!!」

もう一度タニアが俺を呼んだ。

細く目を開けると、タニアと、そしてカールの顔が見えた。
二人ともぼろぼろだ。泥だらけで服はあちこち裂け血が滲んでいる。

それでも何をしてるんだ!と叫びたかった。

俺なんか見てる場合じゃない。
戦っている最中なんだぞ?

このままでは魔物にやられてしまう。
タニアも、カールも。村も。そして―――――

急いで起きあがろうとした。
だが俺の身体は地面に張りついたように動かなかった。

全身の激痛と、それから。
頭と脇腹から――多分、血が流れ出ている感覚。

……どういう状態なのかはすぐにわかった。

悔しさで顔が歪む。

せめてお前たちは逃げろ、と二人に言おうとしたが
俺が言う前にカールが叫んだ。


「リアン!しっかりしろ!
援軍が来たんだ!助かった!」

「―――――」


―――援軍?


タニアも言った。

「ああ!すごい数だ!きっと辺境伯サマだよ!
辺境伯サマがとうとう動いてくれたんだ!」


―――辺境伯サマ?


何を言っているんだ?

そんなはずはない。

辺境伯サマはそんな人間じゃない。

辺境伯サマは……あいつを―――――


だが、やけに人の声が大きくなっていた。
空を飛んでいるのは……矢だった。それもすごい数の。


言葉をなくしていると、こちらへ男が一人走ってきた。

カールとタニアの言う援軍なんだろう。
見たことのない装備を纏った、見たことのない顔だった。

男は俺たちに言った。

「大丈夫ですか?!
よくここまで守って下さいました。こんな少人数で……なんと……。
国王陛下が援軍をと仰るわけだ」

「……国王陛下?」

と、カールが言って。
タニアが首を傾げた。

「あんた達。辺境伯サマの軍じゃないの?」

男は首を左右に振った。

「いいえ、違います。
我々は国王陛下直々に派遣された兵です」

「え……国王陛下……?国王陛下が、なんで……」

「辺境の援護と調査を命じられたのです。
訳あって内々の進軍になり、時間がかかってしまいました。
もっと早く到着できたら良かったのですが……。
申し訳ありません。
しかし村に被害が出る前に着けて良かった。
あなた方が必死に持ち堪えて下さったおかげです」

「―――――」

「どうか、後は我々に任せて後ろに下がってください。
ああ、大丈夫。魔物との戦い方は知っています。
教えていただきました。
大砲も火も使いません。
だから安心して。
あなた方は早く怪我の手当てを―――」


俺の耳に
はっきりと、あいつの声が聞こえた気がした。

なんでもないことのように微笑んで言った、あの―――――



――「うん。私、王女だから」――



俺は
そのまま意識を手放した。


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