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1000年目

37 変化 ※エリサ

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 ※※※ エリサ ※※※



次の日、私たちはコドリッド伯のお屋敷に戻った。

一泊させてもらい、明日の朝には《王都》へ向かう事になっていた。

コドリッド伯が豪華な晩餐を用意してくれた。

私たちは旅のことや高山でのことなどを話しながらそれをいただき、皆、それぞれの部屋へ戻るところだった。

「シンのお義兄さん」

チヒロ様の声に皆、ぎょっとした。

見れば、廊下の先にいたのは確かにサージアズ卿だった。

こちらの皆は動揺が隠せない。

だがサージアズ卿は特に何を気にする様子もなく、自分にかけ寄ってきたチヒロ様に言った。

「おや。こんばんは『空の子』様。奇遇ですね」

「こんばんは。シンのお義兄さん。――どうしてこちらに?」

「遊びに来ていたんですよ。
こちらのコドリッド伯とは昔からの知り合いなので」

「そうですか。―――ありがとうございます」

チヒロ様はそう言ってにこりと笑われた。

サージアズ卿は何も言わず笑って去って行った。


目的の植物が手に入ったら――そのあと、チヒロ様はどうしたいだろう。

旅での生き生きとした様子。

《キモノ》に似た服を着るテオ君の一族。

まるで《そこ》が本当の、チヒロ様の居場所のようで―――。


チヒロ様ははたして帰ることを
《王宮》にいることを望まれるだろうか。


不安に思っていた。

けれど

仲良くなったテオ君の一族の皆さんとの別れ。
それは確かに残念そうだったが、チヒロ様は帰ることを選ばれた。

あっさりと。

「残らなくていいんですか?」と、私が思わず聞いてしまったくらいだ。

チヒロ様は笑って言った。


――「私の居場所は《南の宮》だもの」――


サージアズ卿を見ても動じず「ありがとうございます」とお礼まで言われた。

チヒロ様は気付いていたのだ。

護衛はセバス様に《あの男》、そして私だけではないことに。

チヒロ様の――『空の子』様の平穏は、
大勢の護衛なしに成り立たないことに―――

『空の子』様であるが故の籠。

チヒロ様はそれを自覚された。

それでも……笑顔なのだ。

それでも言われるのだ。

私の居場所は《南の宮》だと。

「私は王宮で面倒をみてもらっているだけのただの幼い小娘だから」
と申し訳なさそうに言われ。

《高い知識なし》の『空の子』だという、ご自分の立ち位置に悩んでいたチヒロ様は変わられたのだ。

私は感慨にふけっていた。

その夜、チヒロ様がされようとしていたことなど考えてもいなかった。


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