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 「まぁ!リーリア様!いったいどうなさいました!?」

 ユーインに抱かれ、自室に運び込まれたリーリアに、開口一番パティが発した。
 それもそのはず。
 横抱きにされて送ってもらうなど、本来なら乙女が大好きなシチュエーションだろうに、リーリアの身体は傍目から見ても不自然なほどガチガチに硬直し、顔は焼け焦げたように赤い。

 「パティ、少しふたりにしてくれないか」

 「え?で、ですが……」

 いくらユーインが名誉ある職に就いている人間で、リーリアの想い人だったとしても、守るべき主人を男と部屋にふたりきりにするなんて。
 パティはちらりとアーロンの方を見た。
 するとアーロンが「大丈夫だ」というように自信満々な表情で首を縦に振る。
 もしや夜会で素晴らしい展開があったのかもしれない。アーロンの表情からそう察したパティは、素早くお茶の用意を済ませ、退出した。


 「リーリア」

 「ひゃっ、ひゃい!!」

 「少し話しても?」

 「大丈夫です……すみませんでした……」

 抱きかかえられたまま長椅子に座るリーリアは、穴でも掘ってやりたいくらいにいたたまれない表情をしている。

 「時折……休憩室をあのような用途に使う貴族がいるそうです。毎回とは限りません。なのであまりお気になさらず」

 「ハイ……」

 思い出したのか、それとも知識不足の自分に思うところがあるのか、リーリアは再び頬を赤く染めた。

 「リーリア」

 名を呼ばれ、熱を持った頬を大きな手が包む。
 ゆっくりと顔を向けたリーリアの唇に、啄むような口づけが、二度、三度と落とされる。

 「逢いたかった……」

 一見冷たさすら感じさせる美しい顔を甘くとろけさせるユーイン。
 目蓋に、頬に、鼻の先、チュッチュと小鳥の鳴き声のようなキスが降る。
 少しくすぐったい。顔だけじゃなく、心も。
 
 「私も……逢いたかったです……とっても寂しくて、不安で……」

 「不安?どうして」

 これ以上口にしたら面倒くさい女だと嫌われるかもしれない。
 誰だっていつも快活で、にこにこしている女の方がいいに決まってる。
 そう、イゾルデのような。
 なぜ彼女の事がこんなにも気になるのか。
 ふたりの間には何もないとわかっているのに、彼女に会った後は、いつも心がじくじくと膿むようだ。
 
 「……他の皆さまはいつでもユーイン様に会えるのに、どうして私だけ自由に会えないんだろうって……ごめんなさい、こんなわがまま」

 口に出した途端、激しい後悔に襲われた。
 しかしユーインの反応はというと、リーリアの予想とはまるで違ったものだった。
 顔をそらし、口元を押さえ、プルプルと震えている。

 「可愛い……どうしてそんな可愛い事を言うんですか、あなたは……!!」

 腰を押さえられ、身体を密着させて唇を合わせる。ゆるゆると絡まる舌に、心まで解されていくようだった。

 

 



 

 
 
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