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しおりを挟むまるで白魔道師が、自分たちは特別な存在であると振る舞っているような言い草。
いったいオスカーは何を根拠にそんな事を言うのか。
あのクレイグでさえ、力は民のために使うものだと思っているというのに。
「近年魔道師の出生率は低下の一途を辿っていると聞きます。魔法などという不確かなものに頼らず、自分たちの力でそれに代わる……いや、勝るものを作り上げることは、この国の課題だと私は考えています」
オスカーの、魔道師たちに対する個人的感情については、到底受け入れる事はできない。
しかしその内容がすべて間違っているともいえない。
魔道師はいつかいなくなるかもしれないとユーインは言っていた。
万が一そんな事態になれば、魔法の力に依存しているアルムガルドに未来はない。
──今は彼に腹を立てている場合じゃないわ
オスカーの述べた内容は、魔力を持たない一般人の率直な意見の一つでもある。
これからは研究所を通して、両者の間にある隔たりや誤解をなくしていかなくてはならないのだから。
「殿下は、今度の夜会には参加されますか?」
「夜会ですか?」
リーリアは、いつも必要最低限の行事以外は出席していない。
着飾ることも、貴族たちの化かし合いも好きではないから。
しかし、リーリアの出欠などオスカーには関係ないだろうに。
彼の意図が分からず困惑するリーリアの表情に気付いたのか、オスカーは慌てたように付け加えた。
「いえその、おそらく次の夜会で陛下から研究所についてなにかお言葉があるのではないかと思いまして。それなら関係者の方々も出席されるのでは、と思った次第です」
「そうなのですね……もしそういう事になるのでしたら出席すると思います」
タイミングよく出口で待つアーロンの姿が見え、リーリアはそこで話を切り上げた。
「では、私はここで……」
「はい。またお会いできる日を楽しみにしております」
笑顔で見送るオスカーから少し離れたところでアーロンは不思議そうに後ろを振り返った。
「どうしたの?アーロン」
「いえ……あの方、どうも見た事があるような気がして……」
「ふふ、アーロンったら。見た事があるのは当然よ。夜会などで何度かお会いしているのだもの」
しかしアーロンは首を振る。
「もちろんあの方がクラウスナー侯爵子息だというのは分かってますよ。でもそうじゃなくて……こう、何ていうか……似てる人を知ってるような……いえ、やっぱり気のせいだと思います。すみません」
「そう……」
アーロンはいったい誰とオスカーが似ていると思ったのか。
今のリーリアには色んな事で頭がいっぱいで、気にする余裕がなかった。
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