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しおりを挟む話は少し前に遡る。
「ヒィィッ!!」
「貴様……姫に万が一の事があれば……いや、例えご無事だったとしても命は無いと思えよ!!」
「フィ、フィラン団長!!落ち着いて下さい!!」
床に引きずり倒した宰相に剣先を突き付けるフィランを団員達が命懸けで止めに入っている。
「離せ!!お前らも斬られたいのか!!」
陸は騎士団、そして空からは竜騎士団が至る所を昼夜問わず必死で捜した。
これほど大がかりな捜索をしてもエリーシャは一向に見つからない。
頭に血が上ったフィランは宰相の部屋に乗り込み開口一番“殺す”と言った。
「い、いくらフィラン殿と言えど宰相であるこの私に手を出して無事で済むと思うなよ!」
腰を抜かしながら叫ぶ宰相に、フィランはニヤリと嗤う。
「望むところだ。どのみち姫がいないこの世で生きるつもりはない。その時はお前を斬り刻んでから命を絶つ。覚悟しておけよ……!!」
団員達はスクラムを組むようにしてフィランを止めながら心の中で恐怖した。
“怖い怖い怖い!!事情を知らない人間から見たらどう考えても団長が悪人!!”
“団長が姫様の事好きなのは見てたらモロバレだったけどここまでだなんて引く!!”
“姫様どこ行ったの出てきてお願い!!”
「おいお前達!!縄でこいつを縛れ!!」
「え!?」
団員達は揃って声を上げる。
まだ何の罪も確定していない宰相を縛り上げるなんてそんな事、一介の騎士である自分達に出来る訳がない。
「何をしてる!?早くしろ!!お前らから斬り倒すぞ!!」
「いいい嫌ですっ!!やりますっ!!」
そして斬られたくない団員達は泣く泣く宰相を縛り上げた。
「姫が見つかるまでこいつを竜舎の檻に入れておけ!」
フィランはそう言い残して部屋を出て行った。
*
「………ピィ!?」
そして宰相はその通り檻に入れられた。
縄で雁字搦めにされた彼の目に映ったのは号泣しながら哺乳瓶にしがみつく子竜だった……
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