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8章
46 帰還②
しおりを挟む「離れがたいのはわかるがそろそろ出発しよう。すまないな、リンシア王女。」
リンシアはクリストフに顔を拭いて貰いながら笑顔で首を横に振った。
「いいえ殿下、それよりも最後まで父が挨拶出来ない事…本当に申し訳ありません。」
レオナルドは薬の禁断症状と戦うために現在手足を拘束された状態にあった。毒を盛り続けた張本人ギヨームによると、この薬は長期に渡って服用すると能神経を侵し、一生完治する事がないそうだ。レオナルドはこの先ずっと、死ぬまで薬への欲求と戦い続けなければならない。
「…しばらくはレオナルド国王も君達も辛いだろうが心を強く持つんだ。フランシス叔父上のところから薬学に精通する者も派遣する。大丈夫…きっと乗り越えられる。」
「はい…。何から何まで本当にありがとうございます。それとマリエル様」
「はい。」
「無事出産を終えられるよう祈ってます。どうかお身体に気を付けて…。」
そう言うとリンシアはまた泣き出した。
クリストフのハンカチはリンシアの涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってしまったので、今度はマリーが自分のハンカチでリンシアの涙を拭いた。
「リンシア王女、私もリンシア王女がクリストフ様の元へ嫁がれる日を楽しみに待っています。」
「……シア……。」
「えっ?」
「シアでいいですわ!もうお友達ですもの!」
顔を真っ赤にしてリンシアは言う。
泣いたり叫んだり赤くなったりと、本当に可愛い人だとマリーは微笑んだ。
「ではシア、私の事もマリーと呼んで?」
「ええ、マリー!またね!」
二人はお互いを抱き締め再会を誓う。
今度会うときは人妻同士で私は一児の母だ。
「さぁ、そろそろ行こう。」
ユーリの合図に皆が頷く。
帰ろう。私達の祖国へ。
愛する人の待つガーランドへ。
そしてカイデン様の勇ましい掛け声が響く。
「これよりガーランド第一王子ユリシス殿下、マリエル妃殿下をお守りする!国境を越えるまで決して油断するな!!必ずや無事にお二人を祖国へお帰しするぞ!!」
カイデンの掛け声に呼応する兵士達の声が地鳴りのように地面を揺らす。
そしてユリシス達はついにガーランドへ向けて出発したのだった。
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