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8章
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しおりを挟む「どうしたクリストフ?」
「殿下!あれ?マリエル様は!?」
「リンシア王女に茶に誘われて部屋にいる。何かあったのか?」
どうしよう…殿下に言うべきか?
もしこの事を殿下が知れば烈火の如く怒り狂いマリアの首をその手ではねるかもしれない。いくらダレンシアを救った身だとしても娘を殺されたとあればカイデン将軍も黙ってはいないだろう。
「何だ?言いたい事があるなら早く言え。」
どうすればいい?父上…父上ならこんな時どうする!?
「で、殿下、そう言えばマリア嬢を見ませんでしたか!?」
「マリア嬢?いや、見ていないが…」
マリアはシアと面識があるのだろうか…それならまずシアに相談するのが先か。何とか大事にせずマリアを退かせる事が出来れば…!!
「おい!クリストフ!?」
「すみません殿下!シアに会いたくて仕方ないので行ってきます!!」
クリストフはリンシアの私室がある宮まで全速力で駆けた。途中マリアの姿が見えないか注意していたが、やはりマリアを見つける事は出来なかった。
「シア僕だ!!入れて!!」
「クリス?どうしたのそんなに慌てて?」
「シア!マリエル様は!?」
「え?ええ、いらっしゃるわよ。ほら…」
リンシアが身体をよけて部屋の中を見せると少し驚いた顔をして中央のテーブルに座るマリエルが見えた。
「クリストフ様?どうされたんです?」
「…良かった…まだ無事だった…!」
「まだ無事ってどういう事?何だか凄く物騒な物言いね。」
「シア、マリエル様、話があるんだ。少し良いかな?」
リンシアとマリエルは顔を見合わせて頷いた。
「…マリア様が…ユーリを……。」
これまでの経緯をクリストフから聞いたリンシアはすぐさま険しい表情になった。しかしマリーは落ち着いてその話を聞いていた。
「マリエル様…驚かないの?」
自分が毒殺されようとしているのになぜこんなに落ち着いているのか。クリストフは不思議に思って尋ねた。
「…ユーリを愛する女性がそれほどまでに思い詰め、行動するのを見るのは今回が初めてではありません。」
それほどまでに彼は稀有な存在。
知ってしまえば後戻り出来ないほどに甘美な夢を見てしまう。
「マリア様の態度を見れば彼女が私を疎ましく思っている事はよくわかります。」
「…殿下に伝えようか悩んだんだ。でも今の殿下にそれを伝える事に僕が躊躇してしまって…。」
「あら、どうしてクリス?殿下にお願いして守っていただくのが一番ではありませんの?」
「ここはガーランドじゃない。ダレンシアだ。しかも相手はこの国を救ったうちの一人、将軍の娘。万が一マリア嬢の身に危害が及ぶような事があればどうなるか…。カイデン将軍だって人間であり父親だからね。」
「でも殿下だっていきなり斬りつけるような真似はしないでしょう!?」
「毒薬だよシア!?しかもあのギヨーム特製だ!確実にマリエル様とお腹の子の命を奪おうとしてるんだ。殿下は今マリエル様とようやく会えた事で気持ちに歯止めの利かない状態になってる。そんな時にマリエル様に万が一の事があれば……!!」
「…きっとユーリはマリア様だけじゃない。関係した者すべての命を奪うかもしれないわ。」
「…マリエル様……。」
そうだ。ユーリと私は一対の命。
今私に万が一の事があれば彼は怒りに我を見失うだろう。やっとの事でここまでやり遂げたのに。そんな事お構いなしに…。
「黙ってやられる訳にはいきません。私は死ねない。クリストフ様、リンシア王女。どうか私に力を貸して下さい。お願いします。」
守られているだけではいつかこの命は呆気なく奪われてしまうだろう。
戦わなくては。
私のためにユーリが命を懸けたように私も。
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