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7章
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しおりを挟む「…………子供………君と、殿下の……?」
ジョエル様は放心したように口を開き、その目は何かを見ているようで何も映していない。
言ってしまった。でももう無理だ。彼は私をどうするだろう。今この場で斬り殺すだろうか。それとも子が生まれるまで待って私から取り上げるのだろうか。彼からの返事を待つが、何も返っては来ない。言わなければ良かったのだろうか。あのまま我慢して奪われていれば良かったのだろうか………。
そしてしばらく黙っていたジョエル様が口を開いた。
「………わかった」
「……え…………?」
今…“わかった”って言ったの……?
それはどういう意味なの………?
「はは……変な顔してるね。多分俺もなんだろうけど……。すまなかった。お腹の子がいるのに怖かっただろう?」
ジョエル様の手は優しく私を撫でる。
「……殺さないのですか?私を……」
私の問いに彼は眉を上げ目を見開く。
「何で君を殺すのさ!?」
「だって……だって……だってこの子は……!」
この子はユーリの……ガーランドの王族の血を引く子なのだ。この人にとっては邪魔者でしかないだろうに。
しかし私の言いたい事がわかったのかジョエル様は仕方なさそうに微笑む。
「マリー……子供に罪はない。確かに殿下の子だと聞けば俺だっていつも通りの心ではいられない。だけどね……子供は親のせいで不幸になっちゃいけないんだ。俺達みたいにね……。」
俺達……それはジョエル様と弟さんの事なのだろうか。親のせいで不幸に……。
「だから心配しないで産みなさい。その子は俺の子として育てる。大丈夫だ……。」
助けてくれるの?……見逃してくれるの?
ううん、何だっていい。この子を守れるのなら。
「……ジョエル様……ありがとうございます…ありがとうございます……!!」
涙でぐちゃぐちゃの顔で言う私を今度は本当に面白そうに笑う。
「ははは、すっごい顔だよ。ちょっと拭きなさい。」
彼は側にあった布で顔を拭いてくれる。
「……母親は強いね。まだ形もしっかり出来ていないだろう腹の子に、これだけ愛情を持てるんだから……。俺の母親もそうだったのかな…」
「ジョエル様 ……」
「その呼び方はやめなさい?」
「……はい、エル……。」
「よろしい。ちょっと待ってて?」
ジョエル様はそう言うとベッドから降り、扉の方へ向かった。
「リュカ!馬で行く予定は変更だ!!馬車を用意しろ。揺れの少ないものだ。」
リュカ……?彼の従者だろうか。
「今からですか?しかも揺れの少ない作りの良いものとなると少々時間がかかりますよ?」
扉の向こうからチラリとこちらを覗いたその声の主は金色の髪をしている。
「……あなた……!!!」
全身を血で濡らし、エルザさんの首を斬ろうとしていたあの男だった。
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