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6章

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「マリー!!」

シャルル様が私に気付いて手を振ってくれる。

「シャルル様、お久し振りです。」

シャルル様にお会いするのはユーリへの気持ちをお伝えしたあの日以来だ。

「マリー、とっても綺麗だ…。兄上の婚約者ならもう少し派手でも良いくらいなのに、嫌味にならないようわざと紺の布地を選んだんだね?マリーのそういうところ、僕は大好きだよ。」

え?好き?

「ふふ。言ったでしょ。僕はマリーへの気持ちを消さないって。想うのは自由でしょ?」

「シャ、シャルル様……。」

「この先兄上に嫌気が差す時が来るかもしれないじゃない?逃げ場を持つのも人間大切な事だよ。何かあったらすぐ僕の所へおいで。何があってもマリーを守るから。」

シャルル様はいつものキラキラしたオーラをすっかり取り戻していた。話の内容よりもその事が嬉しくて、私は何も考えずつい“はい”と返事をしてしまったのだがそれが良くなかった。

「………へぇ。」

まずい!!そう思って振り向くと、ユーリの冷たい視線が私を凍らせる。

「いや、あの、ユーリ?ごめんなさい。今のはつい…ついね………?」

何とかごまかそうと試みるがユーリは笑ってくれない。

「………婚約もまだだって言うのにもう浮気を視野に入れてるのマリー?」

そそそんなめっそうもございません!!!

「シャルルの事なんて考えられないようにしておかないとね………さぁどうしたものか…。」

どうにもしなくて結構です!!




「ダレンシア王国第一王女リンシア様御入来!!」


扉の方から響く声に皆が一斉に振り向く。
私はユーリの隣に立ち王女様が入って来られるのを待った。

ふとお父様達の方へ目をやると、いつの間にかダニエル様の横にジョエル様とマリアンヌ様が立っていた。


ーーーーえ……?


一瞬。ほんの一瞬だけどジョエル様と視線が交わった。

いつもの冷たく嘲笑うような目じゃない。
真っ直ぐな………とても真っ直ぐな目。

しかし彼はすぐに視線を扉の方へと戻す。
気のせいだったかしら………。

玉座に続く赤い絨毯をリンシア王女と見られる豪奢な装いの女性がゆっくりと進む。その後ろには大きな箱を抱えた何人もの従者がついてくる。

あの大荷物…一体何かしら………。いくらしばらく滞在するからと言ってまさか広間の中には荷物は持ち込まないだろう。そして献上する手土産だとしても多すぎる。

異様な光景に居並ぶ貴族達からもざわめきが起こった。



「ガーランド国王ジュリアン陛下、お目にかかれて光栄にございます。ダレンシア第一王女リンシアにございます。」

リンシア王女は玉座に座るジュリアン陛下の前に跪き、恭しく礼をする。

「長い旅路をご苦労だったねリンシア王女。久しくお会いしていないがダレンシア国王は息災かな?」

「はい。最近は兄に仕事を放り投げて楽ばかりしております。もう少し働いても良いくらいですわ。」

リンシア王女は美しい瞳を細めて笑う。

「それにしてもすごい人数だね。わかっていればもう少し迎えの人数を増やしたのだが。何か失礼は無かっただろうか?」

「いえ、ご丁寧なお迎え感謝致します。これらは我がダレンシアより持参致しました心ばかりの御祝いの品でございます。」

広間は一層ざわつく。御祝いの品?ここ最近祝賀の行事など無かったはず。

「リンシア王女、祝いとは一体何の事だい?」

陛下も不思議そうに尋ねる。


「まぁそんな!我が従姉妹の婚約祝いに決まっているではありませんか!ダレンシアでは第一王子ユリシス殿下と、我がダレンシア王家の血を引くマーヴェル公爵家マリアンヌの婚約に沸いておりますのよ!」



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