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5章

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歓迎できない貴族の巣窟とはどういう事なのだろう。そもそも用もなく王宮をうろつく事は出来ない筈なのだが。

「それが出来るんだよ。面会と銘打てばね。出仕する親族への面会だと言えば出入りが認められる。どこから湧いたのかと聞きたくなるほど大勢の着飾った貴族令嬢とその母親が、王宮中、庭の隅々まで闊歩して回ってる。」

「何のために?」

「………私の妃の座を射止めるためにだろうね。城の中をうろついていればそのうちバッタリ私に出会えて目に留まるかも、とか思ってるんだろうね。」

ユリシス様はぶすーっと不機嫌顔になる。

「女性達だけじゃない。毎日私との面会を求めて山のように狸親父達が列を成している。父上と母上の所も同様だ。」

「まさか全員………」

「そう。わたしの妃候補になるため。それもこれもすべてマーヴェルとその取り巻きの貴族達が私とマリーの結婚に物言いをつけたのが原因だ。自分達にもチャンスがあると思ったんだろう。そしてシャルルもその煽りをくらって大変な事になっている。」

「シャルル様が?」

「城中歩き回って何の成果も得られなかった奴らと、面会を求めて追い返された奴らがせっかく城まで来たのだからと、今度はシャルルの所へも押し寄せてる。」

なんて可哀想な事になってるのシャルル様。
明らかに貰い事故じゃないの……すべてはここでふてくされている兄君の問題なのに。

「そしてそんな中マリーへの手紙が消えた。しかも何度もだ。明らかに悪意がある奴の仕業だろう?だからマリーを王宮に呼びたく無かったんだ。公爵邸の方なら私の命を受けた者達が警備にあたってるから安心だし。」

「え!?何ですかそれ?」

「え?だから警備させてるけど。公爵邸を。」

「全然知りませんでした。いつからですか?」

「君に初めて会った次の日から。」

「え!?」

「ついでに諜報活動もさせてるから君に手紙が届いてない事が判明したんだ。」

「え゛!?諜報活動!?」

なにそれ!?私今まで見張られてたって事!?ずっと!?

「でも諜報って言うほどの大袈裟な活動はさせてないよ。別にシモンの事を疑ってる訳でも内情を知りたい訳でもないし。ただマリーに他の男の影がちらついたり危険が迫った時限定の活動だよ。」

何ですかその自分勝手な活動内容設定!

「でもそのお陰だろう?私達の誤解が解けたのも。」

う………確かに手紙が届いてないのを知らせてくれたのは警備の皆さんのお陰だ。

「しかも君が先日アニーの所から帰ってくる時、怪しい馬車が後ろをつけてきたそうだ。」

「えっ!?」

「家紋もない辻馬車のような風体だったそうだが中には男ばかり4人乗っていたそうだ。明らかに怪しい。だからレーブンに頼んで急いで護衛の選定も行おうと思ってね。」

そんな……つけられていたなんて全然気付かなかった。どこからだろう。療養院からだろうか…だとしたらアニーは大丈夫なのだろうか……。

「大丈夫だ。ヘルマンの件もあったから、アニーの身に何もないよう療養院も警備にあたらせてる。」

ユリシス様……そこまで考えていてくれたのね。
なのに………さっきは本当にひどい事を言ってしまった…。


「あの……婚約者候補の事は……マーヴェル家の…………」

「あぁ、マリアンヌとか言ったか……わざわざ君の髪色と瞳の色そっくりの子を連れてくるとはね……。大方昔の父の話をどこかから聞いて思い付いたんだろう。どこから連れて来たんだか…。」

「ジョエル様は義妹だと仰ってましたが……。」

「そんなの有り得ないよ。そんなに都合よく君そっくりな女性と十何年も前に浮気してたら逆にダニエルを褒めてやるよ。それにまったくダニエルに似てないじゃない。髪色も目の色も。怪しいよ。今調べさせてるけどね。
……ていうかマリー、ジョエルに会ったの!?」





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