87 / 331
3章
16
しおりを挟む私が寝込んでいる間、公爵邸に色んな物が届いていた。
まずは王妃様から。上品な木箱に入って届いたそれの中身は外見とは相反する物だった。
「王妃様……これは………しかもこんなに……」
中は怪しい液体の入った透明な小瓶が山ほど敷き詰められ、用法・用量が記された説明書も同封されている。
【避妊薬
用法 事後48時間以内に飲むこと
用量 一瓶 】
王妃様………………。
こんなのお父様に見られたら泣かれるどころじゃ済まないんですけど……。
そしてユリシス様からはお見舞いの品が。
【マリー。シモンから体調を崩したと聞いたよ。
夜会に向けて少し無理をしていたのかもしれないね。滋養に良い物を贈るから、しっかりと休むんだよ。次に会える日を心待ちにしてる。】
箱の中には身体に良い貴重な食材が詰められていた。
問題はこれからだ。いや、王妃様からの贈り物もだいぶ問題アリだったが。
やはりユリシス様の言う通り届いていた。
貴族の皆さまからお茶会の招待状だ。
それにしても数がすごい。挨拶した覚えのない家からも届いていて文箱に入りきらないほどだ。
この中からお友達になる方を選ばないといけないのね……。
これはお二人の力を借りなければ無理だわ。
お返事をお待たせする訳にも行かないから、次のお茶会を早めにしていただこう。
私はお見舞いのお礼と次回のお茶会の日時について、お伺いの手紙をユリシス様に宛てる。
そして、シャルル様へは碧色の糸でシャルル様のイニシャルを刺繍したハンカチを包む。
本当は会ってお礼を言いたいけれど、それは病み上がりのこの身体では叶わないから。
何でだろう……寂しい。
六歳も離れているのに、いつの間にかシャルル様をとても頼りにしている自分がいる。
あの天使のような笑顔に会いたいと思っている自分がいる。
そうだ……もうすぐシャルル様、お誕生日なのよね。何か欲しいものとかあるかしら……でも王子様だから何でもお持ちよね………。
私の用意出来るものなんてたかがしれているけれど、お祝いの気持ちはお届けしたいわ。今度聞いてみよう。
そして数日後、ユリシス様より返信が届いた。
手紙には次の休日に、疲れた私の身体を癒す事と招待客の相談も兼ねて、王都から近い王家の静養地でゆっくりと過ごしたいがどうかと書かれていた。
二人きりなのかしら………。
しかも静養地に行くって事は泊まりがけよね、絶対に。それに……そういう事するっていう意味よね。
王妃様からの小瓶につい目が行ってしまう。
とりあえず、お父様に相談してみよう。さすがにあの父の事だからそう簡単に首を縦には振らないだろう。
そう思っていたのにその日の夜、お父様はいとも簡単に首を縦に振ったのだった。
13
お気に入りに追加
1,279
あなたにおすすめの小説
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
お望み通り、別れて差し上げます!
珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」
本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる