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3章
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しおりを挟む「……それが出来るあいつを心の底から羨ましいと思ってしまう。君を本気で想う前は、考えた事も無かったのに……。」
ユリシス様……。
私の胸に顔を隠すように埋めるユリシス様の表情はわからない。
こんなにもたくさんの想いを貰っているのに私にできる事は何もない……。
「ユリシス様…ごめんなさい……。」
彼の頭を抱きしめて、綺麗な髪に顔を寄せる。
大切な人なのに……こんな想いをさせて……。
「……マリー……マリーが欲しいよ……。」
このまま身を任せてしまえばこの切ない気持ちも無くなるのだろうか。
「ユリシス様……今の私ではユリシス様の求めるものを全て渡す事が出来ません……。
それでも良いですか……?」
自分の心ごと全ては渡す事が出来ない。まだわからないから。
「そんな私でも受け入れて下さいますか?
愛される喜びを……私がユリシス様にあげる事は出来ますか?」
「マリー…………」
あぁ、この顔。シャルル様も同じ顔をしていた。迷子の子供のような顔。
「それでも良い……。もう待てない……。
言っただろう?私はわがままだって……。」
ユリシス様は優しく口付ける。
「マリー…今日は抱かない。だから憶えておいて、今のこの身体の疼きを。」
そう言って私からゆっくり指を引き抜くと、纏わり付いた蜜ごと口に含む。
「私も忘れない……この味を……。」
私はユリシス様が蜜を舐める様から目が離せなかった。
*************
本当は何回も脱がした事があるんじゃないかと思うほどユリシス様は手際よくドレスの乱れを直してくれる。
ついでに髪型もだ。
「ないよ本当に。本当だって。あんまりこんな事言いたくないけど私は父上とは違って正真正銘綺麗な身体だ。誰の手垢も付いてない。」
ものの数分で元通りになってしまった自分とユリシス様を交互に見ると、やはり疑念が湧いてくる。
「この国の第一王子様は何でも出来るんです。」
そう言って私の背中にキスを落とす。
「出来ない事は一つだけ。君の心を奪う事。」
大概は一目で奪えるんだけどね、と軽く言ってしまうユリシス様はやはりすごい。
けれど大声で言っても許される美貌である。
「すまなかったね。婚約者殿が少し気分が悪くなってしまって。」
何事も無かったかのように衛兵に告げると、もう二度目の休憩から広間へと戻る。
「こんな抜け出してばかりで大丈夫なのですか?」
「ん?こんなの普通じゃない?最初見たっきり姿を見かけなくなる男女だっているよ。」
「えっ…!?」
そういうものなのか。何もかもが初めての私には驚く事ばかりだ。
「うっそ!!戻って来たよ!!」
私達が出ていった扉の近くで待っていてくれたのか、サーリー様が驚きの声をあげた。
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