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3章

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「そんなに怒るなよ。せっかく久し振りに会ったんだし。

マリーちゃんもごめんね。二人が結婚する時はうちでとびきりの絨毯贈らせて貰うよ。そりゃもう新婚さんが転がり回って励んでも大丈夫なくらい大きなやつね!」


こ、転がり回って励むって………。
ユ、ユリシス様!?


「お前にしては気が利くじゃないか。

それはそれは大きなやつを贈ってもらおうか。ね、マリー?」


「な、な、な、何を仰ってるんですか!!」


「あ、ベッドの方が良かったかな?それなら上質なシーツも各種取り揃えてるから安心して!マリーちゃんの好きそうな綺麗な色もあるよ!」


そうじゃないの!そうじゃないのよ!

おかしい。まだ婚約者候補のはずなのに、ユリシス様に近ければ近い人ほど結婚確定かのような扱いをされる。


「俺としては絨毯がお勧めなんだけどなー。マリーちゃんもうちの絨毯見たことあるでしょ?ユリシスのは青色で、シャルルのとこは赤色のあれだよ。」


あぁ……そう言えば以前シャルル様のお部屋で転がった美しい絨毯は確かに赤だった。
上質な糸で紡がれたそれは、とてもきめ細やかな織りで厚みもあり、大理石の床の痛さを全くと言っていいほど感じなかった。

ユリシス様のお部屋では見かけなかったわ……。もしかしたら寝室に敷いてあったのかもしれないけれど、あの時はそれどころじゃなかったから……。


「はい。とても細やかで素敵な模様が印象に残っております。あれはサーリー様のところでお作りになられたものだったのですね。

しっかりとした生地の厚みが床の硬さを和らげて、とても心地良かったのを憶えております。」


「でしょ!?さすがだねマリーちゃん!

なぁユリシ………ユリシス?どした?」


ユリシス様の目が据わっている。
対象は明らかに私だ。


「あの……ユリシス様……?」


「………私の部屋の絨毯は今定期の手入れに出している………。マリー…。君、一体どこでサーリーのとこの絨毯の感触を知ったんだい?」


え!?か、感触を知ったってそんな……


「踏み締めたくらいじゃそんな事思わないよね……下の石の硬さが気にならなかった、なんて………。」


無表情のユリシス様の背後に巨大な黒雲が見える……ような気がする。


「マリーちゃん、ヤバイ。

これは本当にヤバイから。ヤバイ以上言えない俺もヤバイけどとにかくヤバイ。」


サーリー様の言語中枢もショートするほどに恐ろしい空気だ。


「おいで、マリー。」


「えっっ!?」


ユリシス様は私の手首を掴み歩き出す。


振り返るとサーリー様が“ご愁傷さま~”と言わんばかりに手を振っている。


「ユっ!!ユリシス様!?」


ユリシス様は一度も私を振り返ろうとせず、ただひたすらに私の手を引いて歩いて行く。


広間を抜け……ここは客人用の休憩室だろうか?


そしてユリシス様の姿に驚く見張りの衛兵に「しばらく誰も近付けるな」と言いつけ、乱暴に扉を閉めた。


暗い室内に入るといきなり身体を引き寄せられ口を塞がれる。


「っっん……ふっ………」


咥内をユリシス様の下が乱暴に這い回る。

こんな荒々しいキスは初めてで怖い。


口を塞がれたまま横抱きにされ、そのまま部屋の奥へと進んで行く。


「っっんっ!!ユリシス様!!駄目です!!会場に戻らないと……さっきも抜けたばかりでこんな………あっ!!!」


ベッドの上に縫い付けるようにしてユリシス様は私の目を覗き込む。


「ねぇ……シャルルの部屋で何をしたの…?」


ユリシス様の顔からは相変わらず感情が読めないままだ。


「何も……バランスを崩して倒れてしまって……それで……っあ、だ、だめぇ!!」


大きな手が私のドレスの裾をあげ太腿を擦り上げる。


「隠さないで。シャルルと何もしてないのなら見せて、全部。」


ユリシス様は私の脚の間に身体を滑り込ませ、レースに覆われたそこに顔を寄せた。


「やだっ、ユリシス様……恥ずかしい……!」



どんなに力を入れて閉じようとしても敵わない。そして彼の指がショーツに差し入れられ、私の身体は弾かれたように跳ねた。




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