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2章
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しおりを挟む「あの……奪ったって………。」
私の問いに王妃様は困ったように微笑んだあと、ゆっくりと話し始めた。
「二人の王子は正反対の性格で有名だったわ。第一王子のジュリアンは活動的で外交的。第二王子のフランシスは慎重で思慮深い性格。でもその性格の違いが逆に良かったのかとても仲の良い兄弟だった。」
「確かフランシス殿下はお身体があまり……今は王家の静養地でお過ごしと聞きましたが。」
「そうなの。心臓が少しね……。薬で何とかコントロールしているのだけれど、昔から身体も弱くてね。 私が彼に初めて会ったのはこの国の建国記念のお祝いに、公国からの使者として訪れた時だったわ。その時も彼は体調を崩していて式典を欠席していたの。
夕刻から始まった祝賀の宴に飽きて、王宮の庭を散策していたら迷ってしまって…。灯りを頼りに歩いていたら庭に一人たたずむ男の子がいたの。月の光に長い銀の髪がキラキラ輝いていて、とても綺麗な男の子だった。
ジュリアンは短髪だったけど、同じ色の髪と瞳だったからすぐわかったわ。彼が第二王子のフランシスだって。
身分を明かして迷った事を伝えるとすぐに彼は助けてくれて……とても優しく微笑んでくれたの。
それから私はこの国を訪れる度にフランシスに会いに行ったわ。彼に恋をしていたの……。」
当時を思い出しているのだろうか……王妃様は少女のような表情をしている。
「身体の弱い彼は横になっている事が多かったから……ふふ……話すのは恥ずかしいんだけど、いつも彼の寝室の広いベッドに一緒に寝そべって、本を呼んだりお互いの国の話しをして過ごしたわ。ただそれだけでもとても楽しかった。本当に大好きだったから……。
そのうちに…彼も私を想ってくれている事がわかって…婚約したの。とても幸せだった。
一緒にいる時はいつも愛し合って、触れていない時間の方が長いくらい。」
「あ、あ、愛し合ってって言いますと……。」
あれですよね……その……そういう事ですよね。
この前ユリシス様に私がされた事の更に先の事ですよね!?
「うふふ…マリーちゃん可愛いわね。顔が真っ赤。そう、そういう事よ。フランシスはとても私を愛してくれたの。 でもね…私が公国へ戻っていたある日、フランシスが大きく体調を崩してしまったと報せが届いたの。いつもは薬で抑えられていたのにその時は駄目で…私はすぐに彼の元へ向かったわ。不安で会いたくて…走るようにしてフランシスの宮へ向かう途中、ジュリアンが立っていたの…。
私…ジュリアンの事がとても苦手だった。ジュリアンにはその当時たくさんのご令嬢や隣国の王女様達が熱を上げていて、ジュリアンはどの方にもそれはそれは丁寧にお相手をしてあげてたわ。
次期国王となる身なのにいつまでたっても身を固めず、刹那の関係を楽しむ彼がとても嫌いだった。 フランシスの兄じゃなければ絶対に関わらなかったと思う。」
意外すぎる……国王陛下は王妃様にぞっこんで、どれだけ側妃をすすめられても歯牙にもかけなかったと聞いたのに……。
「簡単な挨拶だけ交わしてすぐフランシスの宮へ向かおうとしたの。でもすれ違う時手を掴まれて……。抵抗したけどとてもかなう力じゃなかった。そのまま私を抱き上げてさらうようにジュリアンの宮へ連れて行かれたわ。そのあと……泣いて許しを請う私を……フランシスの名を叫び続ける私をジュリアンは無理矢理抱いたの……。」
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