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1章
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しおりを挟む「マリー、本当にいいの?無理してない?」
無理してます。かなりの無理を。
でも、足を踏み出すことは出来なかったけど、いつまでもこのままじゃいけないと思ってた。
「ずるいかもしれませんが……ユリシス様の力を借りてなら、できるかも…しれません。」
本当なら、一人で乗り越えなきゃいけない事なのに。
「……ずるくなんてないよ。安全な場所から君を引っ張り出したのは私なんだ。私が君を守るのは当たり前だよ。」
………ユリシス様の言葉は、いつもじんわりと心に広がって、温めてくれる。
私は初めて自分からユリシス様の手に触れた。
「ありがとうございます…。とても……とても心強いです。」
ユリシス様はびっくりしたように触れられた手を見つめ、照れたように笑った。
*************
「こんなに長くなってしまって悪かったね。夜会については正式な招待状を送るから待っていてね。それと、その日着るドレスは私に贈らせて欲しい。」
「そこまでしていただく訳には……。」
「マリー、私がそうしたいんだ。」
「………はい。」
一礼してユリシス様の部屋を出ると、何とも気まずそうにアランが立っていたが、気まずさなら今の私も負けてはいない。
未婚女性が男性と二人きりでかなりの時間過ごして出てきたのだ。しかも出てきた所を身内に見られるという恥ずかしい展開だ。
「アラン……誤解してるような事は何もないからね……。」
いや、正確にはちょっと…かなりあったが。
しかし頭の中で反芻してしまったのがいけなかったのか、アランの目が鋭く光る
「お嬢さんが望むならいつでも剣を抜く気でいますから……遠慮なく言って下さい。」
「ややや、やめてちょうだいアラン!本当に、本当に何もなかったから!!」
納得しきれない様子ではあったが剣から手を放してくれた。
「今度アニーと一緒にゆっくり話しましょう?その時には色々聞かせてね、アラン。」
アランは少し困ったような笑顔で頷いた。
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