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1章
9ー7 ユリシス
しおりを挟む「僕はマリー嬢と結婚する。」
「はぁ!?」
帰りの馬車に乗りながら僕はアランに宣言した。
「じょ、冗談ですよね!?」
「本気だ。」
「やめて下さい!!!俺、マリーお嬢さんには幸せになって欲しいんです!!!」
「そうか良かったなアラン。僕が彼女を幸せにする。」
アランは頭をかかえて突っ伏した。
「何で今会ったばかりでそういう事になるんです!?ユリシス様と結婚するって事は王妃様になるって事ですよ!?あんなに傷付いて人と会うのを避けてるお嬢さんには荷が重いどころか死刑宣告ですって!!!」
「伴侶を決めるのは時間じゃない。彼女の内面はとても好ましい。傷付いた心もあそこにいればいつかは癒える。それに僕の妃になれば彼女に何かするやつは全員処刑してやれる。」
「お嬢さんに好きな相手が出来たらどうするんです!?」
「安心しろ。まるで負ける気がしない。容姿だって僕より顔の良い男はそうそういるもんじゃない。」
「うっ、腹立つけどそこは認めます…。でも結婚となると他にも色々………」
「大丈夫だ。彼女になら勃つ。夜の方も心配するな。毎晩大変な事になるだろう。」
「精通もまだのくせに何言ってんですか!!」
自分でも不思議だ。見てくれのいいだけの女性なら山ほど見てきた。優しい言葉も甘い言葉も山ほど囁かれた。けれど僕の心を動かした人はいなかった。それなのに彼女だけは僕の心からの言葉をあっさりと引き出した。
過去に怯えながらも彼女の語る姿は凛としていて気高かった。優雅に流れる白金の髪も、淡い空色の瞳も柔らかそうな赤い唇も、僕が今まで見たことのない、汚れない美しいもの。
「僕は絶対に彼女と結婚する。そしてその時は侍女としてアニーも連れていく。心配はいらない。」
観念したのかアランは天を仰ぐ。
「……お嬢さんすみません………俺がこんな人連れて行ったばかりに………。」
アランの呟きが虚しく響いた。
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